顧客層戦略とは

顧客層戦略とは:他社との差別化の基本

顧客層戦略とは
顧客層は具体的に設定することがマーケティングには欠かせない

はじめに

業種や業態を問わず、あらゆるビジネスで顧客層(ターゲット)の設定は必須です。もし、ターゲットを正しく設定していなければ、適切な戦略を実行できません。今回は、マーケティング担当者だけではなく、現場の営業職の方々にも活用しやすいターゲット顧客の選定方法や戦略への活用法を、具体例を交えながら紹介します。 

顧客層(ターゲット)とは

顧客層(ターゲット)とは、自社のビジネスで商品やサービスを提供したい具体的な顧客像またはその市場です。顧客や市場の概念は広すぎるため、企業の戦略に活用するためにはターゲットの絞り込みが重要です。そのために、顧客を細分化し、自社がアプローチする層を具体的に定める必要があります。

顧客のセグメンテーションとは

顧客の属性の細分化を顧客のセグメンテーションといいます。セグメンテーションの属性の代表例として

  • 性別
  • 年齢
  • 居住地
  • ライフスタイル

などがあります。このような属性で顧客を切り分けておくと、自社がアプローチすべき顧客の層が明確になり、ターゲット顧客の分析がしやすくなります。

顧客層戦略と市場選択

顧客のセグメンテーションによって、自社の商品・サービスを提供したいターゲットの顧客層を明確になったら、自社の商品・サービスが競合他社に勝てる市場を選定します。これが、顧客層戦略です。

もし全ての顧客に対して自社商品の展開を考えた場合、各種資源が均等に分散されてしまい、結果としてどの領域でも失敗する可能性が高くなります。競合他社と競争に勝つためには、限定した市場を対象にまとまった資源を投資し、一気にシェア拡大を狙うべきです。実際、大手企業のマーケティングでは非常に緻密なターゲット選定が行われています。もちろん中小企業の場合でもターゲット選定は戦略上の要であり、極めて重要なプロセスです。

カフェに見る顧客層戦略

顧客層戦略の理解を深めるために、カフェの事例を比較しましょう。大手チェーン店のカフェでは、それぞれのターゲット顧客に応じたブランディングや販売戦略を展開し、競合他社との差別化を図っています。今回は、以下の5店を比較します。

  • スターバックス
  • コメダ珈琲店
  • タリーズコーヒー
  • 星乃珈琲店
  • ドトールコーヒーショップ
  • マックカフェ

それぞれの事例から、顧客層戦略の理解を深めましょう。

スターバックス

スターバックスは、「サードプレイスの提供」を理念に、女性客をターゲットとした販売戦略を徹底しているカフェです。アメリカのシアトルから始まり、1996年に東京の第1号店がオープンしたスターバックスカフェは、現在では全国1685店舗まで拡大し、オシャレなカフェとしての地位を確立しました。

スタイリッシュな外観や内装に加え、商品開発やスタッフの接客など、あらゆる面で女性を意識しているスターバックスは、1号店の出店当初から全面禁煙を貫いています。その背景には、タバコの煙を嫌う女性客への配慮があります。今でこそ禁煙カフェは珍しくありませんが、1号店の出店当時では非常に珍しい存在でした。あえて喫煙層をターゲットから排除したことで、サードプレイスを提供するというコンセプトが際立ち、競合他社との差別化が実現しました。ターゲット顧客に合わせてブランド価値を向上させた企業戦略の代表例といえます。

コメダ珈琲店

回転率を重視しがちな飲食店業界の中で、コメダ珈琲店はあえて「くつろぎ」を重視した販売戦略を展開しています。名古屋から始まった喫茶チェーン店であるコメダ珈琲は、常連客の獲得を重視し、長時間滞在しても居心地がよい空間を演出しています。そのため、ご年配の方からお子様連れ、お一人様での利用まで幅広い層の顧客が日常的にお店を訪れたくなるように、ログハウス風の建物の設計や提供メニューに工夫をこらしています。

コメダ珈琲店の全店舗の内、97%がフランチャイズ経営のため、それぞれの地域のオーナーに裁量を委ねることで、地域の特性に合ったサービスが展開できるのも同店の強みでしょう。独自の「くつろぎ」の提供によって地元の常連客を獲得し、顧客一人あたりの単価向上を狙う顧客層戦略です。

タリーズコーヒー

大手チェーン店の中でも、コーヒーの質にこだわる顧客向けの展開を行っているのがタリーズコーヒーです。スターバックスと同じくアメリカのシアトルから始まったお店で、日本第1号の出店時期も1997年とほぼ同じですが、その戦略は全く異なります。

  • タリーズコーヒーは、豆の選定からコーヒーの抽出まで一貫したこだわりを行っています。コーヒー豆は、生産地にこだわらず、独自の基準で厳選したものを輸入
  • 豆の焙煎は全て国内で行っており、豆の種類に合わせて焙煎方法を変えている
  • コーヒー粉の重量や抽出時間、抽出量など細かなルールを設けている
  • バリスタが1杯ずつ丁寧に抽出し、安定した高品質のコーヒーを提供している

上記のような特徴から、大手チェーン店の中でも本格志向のコーヒーを手軽に楽しみたい顧客に好まれています。

星乃珈琲店

高級志向の顧客をターゲットとする大手チェーン店のカフェの一つが、星乃珈琲店です。シニア層やサラリーマンをターゲットに、どこか懐かしさを感じさせる昭和レトロな雰囲気を全面に打ち出し、上質な空間づくりにこだわっています。豪華なシャンデリアや革張りの椅子、高級感のある食器など、店内の内装はすべて顧客にゆったりとした時間を味わってもらうための仕掛けです。星乃珈琲店のメニュー単価は競合他社よりも高めに設定されていますが、こうした「レトロで上質な空間を味わう体験」も価格に含まれるため、レトロ感を好む顧客の満足度は高まるのです。星乃珈琲店は、後述するドトールコーヒーショップと運営企業が同じであり、顧客層に合わせてブランドイメージを変える顧客層戦略の好例といえるでしょう。

ドトールコーヒーショップ

星乃珈琲と運営母体を同じくするドトールコーヒーショップは、多忙なサラリーマンをターゲットにした顧客層戦略を展開しているカフェです。「がんばる人の、がんばらない時間」

をコンセプトに、仕事の合間の癒やしの場を提供します。

ドトールコーヒーショップのメニュー単価は、コーヒー1杯あたり、星乃珈琲店のほぼ半額です。星乃珈琲店とは違い、提供方式もセルフなので、短時間でリーズナブルにコーヒーや軽食を楽しみたい顧客に適しています。同じサラリーマン向けでも、仕事の合間に小休憩したい人向けのドトールコーヒーショップと、ゆったりと時間を忘れてくつろげる星乃珈琲店では対照的です。顧客層戦略を行う場合、単なる属性だけではなく、顧客のライフスタイルや行動パターンも意識することで、より効果的な営業アプローチができるでしょう。

マックカフェ

マクドナルドが展開しているサービスの1つ、マックカフェも同社の顧客層戦略がわかりやすい好例です。マックカフェは若年層やファミリー層をターゲットとしており、通常のマクドナルドの顧客層とは異なる利用シーンを想定した商品展開を行っています。

マックカフェでは「バリスタ」と呼ばれる専任のスタッフが対応し、ブラウンカプチーノやかぼちゃのポタージュなど従来のマクドナルドよりもおしゃれで本格的なカフェメニューをお手頃価格で味わえます。季節やトレンドに合わせた期間限定メニューも用意することで、「マクドナルドでは物足りない」と感じる若年層やファミリー層を取り込み、顧客層の拡大と利益率の向上を狙っています。ファーストフードのイメージから一歩踏み出したカフェ展開によって、マクドナルドという企業のイメージアップも期待できる顧客層戦略といえます。

顧客層戦略の理解が進むおすすめの本

顧客層戦略についてさらに理解を深めるには、この記事の内容に加えて知識を体系立てた本の読書もおすすめです。以下に、顧客層戦略を実践的にまとめた良書を4冊ご紹介します。

  • たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング
  • 新しい顧客の作り方:見えない消費者をあなたのお客さまに変える
  • カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則
  • 顧客体験マーケティング 顧客の変化を読み解いて「売れる」を再現する

それぞれの書籍の概要を説明します。ぜひ購入の参考にしてください。

たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング

P&G、ロート製薬、スマートニュースなどのマーケティングを手掛けてきた西口一希氏の著書です。たった一人の顧客に焦点をあて、その顧客のことを徹底的に理解することで、ビジネス成長のアイデアを生み出す手法はさまざまな業界に応用できます。実践的なフレームワークも紹介されているため、すぐにでも現場で活用できる本です。

顧客ピラミッドの概念とは

顧客起点マーケティングの本の中で紹介されているフレームワークのうち、「顧客ピラミッド」の内容を一部紹介します。このフレームワークは、顧客を商品やサービスの認知度、購買経験、購買頻度によって、以下の5つのセグメントに分ける手法です。

  • ロイヤル顧客:商品・サービスの認知あり/購買頻度が高い
  • 一般顧客:商品・サービスの認知あり/購買頻度は中~低
  • 離反顧客:商品・サービスの認知あり/購買経験はあるが現在は購入していない
  • 認知・未購買顧客:商品・サービスの認知あり/購買経験なし
  • 未認知顧客:商品・サービスの認知なし

この分類を用いると、次の3つの基準をもとに、既存顧客だけでなく、潜在顧客まで定量化できるため、今後の戦略立案の土台として非常に役立ちます。

  • 自社商品を知っているのか?(認知度)
  • 自社商品を購入したことはあるのか?(購買経験)
  • どのくらいの頻度で自社商品を購入しているのか?(購買頻度)

顧客ピラミッドをこれから実施する場合は、まず上記の3項目のデータ収集と整理から着手するとよいでしょう。

新しい顧客のつくりかた

この本は、欧米のビジネススクールで日本人初の学長を務めた山脇秀樹氏の著書です。通常の「新規顧客獲得」の視点ではなく、デザイン思考を「ゆるく」用いて、新規顧客の心をつかむための手法が記されています。新規事業の創出や新たな市場への参入を検討しているフェーズなら、ぜひ参考にしたい本です。デザイン思考の具体的な現場活用を知りたい人にもおすすめです。

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

カスタマーサクセスソフトウェアを提供するゲインサイトのCEO、ニック・メータ氏らが記した本書は、今流行のサブスクリプションサービスに注目している人におすすめの書籍です。近年さまざまな分野で導入されている定期購入や従量課金などのビジネスモデルに焦点をあて、それらのサービスを成功させるために必要な顧客との関係性構築について具体的な手法が記載されています。自社の成功ではなく、「顧客目線での成功」の考え方を実践的に学べる良書です。

顧客体験マーケティング 顧客の変化を読み解いて「売れる」を再現する

顧客データに基づくブランドの戦略策定や施策立案を得意とする株式会社コレクシアの代表取締役、村山幹朗氏と同社CXOの芹澤連氏が書いた本書は、「天才でなくても、売れる商品は作れる」をキャッチコピーに掲げている実践的なマーケティング本です。100以上のブランドと5000人以上の顧客体験の分析結果をもとに「顧客体験とは何か?」「顧客の視点を持つということはどういうことなのか?」という原理原則がまとめられています。他社事例を参考に、自社のアクションプランに策定したいときにおすすめの本です。

まとめ

顧客層の理解と具体的な戦略について、ポイントをまとめると以下のとおりです。

  • 業種や業態を問わず、顧客層の理解が戦略の基本となる。顧客層を理解するためにはセグメンテーションの活用が効果的である
  • 競合他社と差別化するために、大手企業ではターゲットを絞り、一貫したコンセプトで商品展開を行っている
  • より体系立てて顧客層戦略を学びたい場合は、本記事内で取り上げた書籍なども活用するとよい

顧客層戦略は、記事内で紹介したカフェの事例以外にもさまざまな業界で行われています。ぜひ本記事の内容を参考に、さまざまな事例を学び、自社の営業戦略に活用いただければ幸いです。

>サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

「この価格で本当にオウンドメディができるんですか?」「サブ丸は安価ですね。コンサルが入るのと比較できませんが、一般的な費用の1/4ぐらいじゃないですか」このサービスをローンチする前に相談したマーケティング&コンサルタント会社の担当者から聞いた言葉です。サブ丸はサービス内容と比較して安価かもしれませんが「私たちは値段を売っているのではない。サービスを提供しているのだ」と信念を持って取り組んでいます。

大企業はその企業に応じたマーケティング予算と手法があり、スタートアップ企業や中小企業、あるいはニッチャーには、それぞれに応じたマーケティングや新規開拓の方法があります。企業の成長過程では、取り組みが異なるのは当然ですし、それを構築することが何より重要です。そのお手伝いをするのが私たちの使命です。そして成長すれば、その取り組みコストは回収できるはずです。サブ丸は年間運用で60万円あまりのコストがかかります。そのコストを回収し、さらなる飛躍をめざす企業にご利用いただきたいと考えています。

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