顧客体験

顧客体験(CX)向上のメリットとは

顧客体験
ユニークな顧客体験がビジネスを飛躍させる

はじめに

インターネット技術の普及する中で、企業のマーケティング戦略のなかで顧客体験の重要度が高まっています。顧客体験とはもともと、海外の用語でカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience:CX)を指します。企業の戦略上、必須の考え方である「顧客体験」について具体例を添えながら説明します。

顧客体験とは

顧客体験とは、企業が提供する商品やサービスに対して見込み客が興味を持ち、最終的に購入してアフターサポートを受けるまでの流れの中で、顧客が体験する全ての事象のことです。

顧客体験を可視化し、改善点を明らかにすれば、顧客満足度の向上が可能になります。例えば、プロ野球球団ヤクルトスワローズがその好例としてあげられます。同球団ではファンクラブ会員を増やすために「親しい友人や家族におすすめしたいですか?」「おすすめするとしたらどういうところですか?」という質問を既存会員向けに発信し、集めたデータを分析して、以下の3つの施策を実施しました。

  • “入会特典”の価値を高めるために、複数選択できるグッズを用意
  • “選手とふれあう場”を多く提供するためのイベントを企画
  • ”地方限定“のグッズやユニフォームを開発し、地方会員の体験価値を向上

その結果、2014年から2016年の2年間で会員数を2.5倍に伸ばすことができました。

顧客体験の必要性とは

顧客体験を可視化し、向上させるための施策を打つには時間や労力などのコストがかかります。それでも多くの企業がマーケティングで顧客体験を重視する理由は何でしょうか?

2021年に日経リサーチが首都圏・関西圏・中京圏のビジネスパーソン約1000人を対象に、「新型コロナ禍でのビジネス課題」について調査したデータを見ると、顧客体験が重視されている理由がわかります。同調査の結果を見ると

  • 1位:顧客ニーズの変化への対応(64%)
  • 2位:デジタル化の一層の推進による生産性向上(33%)

と「顧客ニーズの把握と対応」が重視されていることがわかります。顧客ニーズへの対応には、顧客視点を起点とする取り組みが不可欠であり、そのための有効な手法として顧客体験向上に向けた取り組みに注目が集まっているのです。

出典:https://www.nikkei-r.co.jp/column/id=7728

顧客体験の向上によるメリットとは

顧客体験を向上させると、商品やサービスを提供する企業はどのようなメリットを享受できるでしょうか。先述したヤクルトスローズの事例を考えても、さまざまな利があることは見て取れますが、具体的な言葉で説明しきれないマーケティング担当者もいるでしょう。顧客体験を向上させるメリットについて体系立ててまとめました。

顧客体験により既存顧客の維持ができる

顧客体験を高めると、既存顧客のさらなるリピートを生み出し、特に生涯価値の高い顧客を維持しやすくなります。なぜなら顧客体験を改善することで、商品自体の機能がそのままでもトータルの価値が高まり、顧客がお得感を感じるからです。たとえば、顧客がもしアフターフォローに不満を抱いていることがわかれば、そこを改善する仕組みを取り入れるだけでリピート購入が増えます。

  • 商品の使い心地をヒアリングする
  • バージョンアップなど最新情報を提供する
  • 他の顧客の成功事例を伝える
  • 顧客の困りごとを解決する新たな提案を行う

などアフターフォローの手法はさまざまです。顧客からの信頼が高まるだけではなく、売上アップも見込めるため、業界を問わず積極的に行っていくべきでしょう。

顧客体験は競合他社との差別化になる

他にはない顧客体験をもし提供できれば、競合他社との差別化になり、ブランディングとしても効果的です。素晴らしい験をした顧客は、自然とその経験を周囲に伝えようと行動を起こすため、紹介や口コミが連鎖するからです。

たとえば、自動車業界ではメルセデス・ベンツUSAが”最高の顧客体験“を提供するために企業改革を行った事例がよく知られています。同社はそれまでの「製品中心主義」から「顧客体験主義」に方針を切り替え、顧客に特別感を感じさせる商品・サービス作りを徹底しました。

その結果、セールス満足度指数調査で、2014年に1位に返り咲きました。最高の顧客体験を提供するには、トップから末端に至るまであらゆる面で仕事のプロセス自体を見直す必要があります。改善のプロセスが多ければ、それだけ効果が目に見えてわかります。

顧客体験は既存顧客のロイヤルティを向上させる

既存顧客のロイヤルティとは、企業のブランドや商品・サービスなどに対して顧客が抱く信頼や愛着を指しています。ロイヤルティが高いと、一人あたりの購入額が増えたり、リピート購入率が高まったりします。顧客体験の見直しと改善は、ロイヤルティも高める効果が期待できます。

ロイヤルティ向上をECサイトでうまく取り入れている例がAmazonでしょう。カートに入れたまま放置している商品のリマインドや定期的に購入する見込みが高い日用品の再購入オファーなど、顧客の購入体験に寄り添った至れり尽くせりのシステムを採用し、顧客にメリットがあるセールなどのメール送付も欠かしません。そういった顧客体験のシステム設計を通じて、「何を買うにしてもAmazonを第一選択にする」ロイヤルティの高い顧客を増やす戦略なのです。

顧客体験でブランドイメージが向上できる

優れた顧客体験は、そのまま優れたブランドイメージに直結します。リッツ・カールトンや帝国ホテルのような「感動を生み出すサービス」を強みとする企業は、まさに顧客体験を大切にしている企業の代表例といえるでしょう。

顧客体験の改善に伴うブランドイメージの向上は、顧客に対する影響はもちろんのこと、従業員の教育にとっても非常に重要な意味を持ちます。たとえばリッツ・カールトンであれば「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」をモットーに掲げ、全従業員に対してその理念を浸透させる「クレド」が有名です。

自社の社員の中でブランドイメージを高める「インナーブランディング」は、商品・サービスの質を高め、顧客満足度向上につながり、最終的にはブランドイメージの向上につながります。

顧客体験と業務の効率化は両立できる

顧客体験を向上させる施策を検討する場合、多くのマーケティング担当者が懸念する点が業務の効率です。顧客体験を高めるには手間やコストがかかります。そのため、結局、業務負担を増やすだけではないかと思いがちです。しかし、顧客体験の向上が業務の効率化につながるケースも多数存在します。

たとえば、Webサイトを制作する際にUIという考え方があります(UIとは、ユーザーインターフェース:User Interfaceの略称)。

たとえばAmazonのショッピングページのように優れたUIを実現したサイトでは、顧客が迷わずほしい情報にたどり着き、そのまま商品やサービスを購入したり問い合わせを行ったりすることができます。その結果、顧客からも「使いやすいサイト」と評価され、顧客の購入を効率化できるのです。

顧客体験の仕組みは収益の向上になる

顧客体験を高めるための仕組みは、そのまま商品・サービスの顧客価値を高め、顧客満足度を上げ、最終的には収益増加につながります。先述したとおり、顧客体験を改善すれば顧客のロイヤルティが高まります。ロイヤルティが高い顧客は、他のブランドに目移りすることなく、その企業の商品・サービスを購入し続ける傾向があります。加えて口コミや紹介による宣伝効果も見込めるため、収益性が自然と高まります。

一番イメージしやすい事例は、iPhoneやiPadなどをリリースしたApple社でしょう。Apple社は洗練された商品による顧客体験を重視しており、世界的にもロイヤルティが高い顧客が多いことで知られています。Appleのファンの場合、携帯電話やパソコンなど身の回り品をApple製品で統一しているケースが多く、同企業の高い利益につながっています。

顧客体験の増加では新商品・サービスの開発に役立つ

顧客体験の視点は、新たな商品やサービスを開発する際の指針として有用です。現在の消費傾向は、モノからコト、そしてトキへと移り変わっています。トキ消費のポイントは以下の3点です。

  • 非再現性:時間や場所の限定により、同じ体験が二度とできない
  • 参加性:不特定多数の人と感動をシェアできる
  • 貢献性:自分が盛り上がりに貢献していると感じる

したがって、その「トキ」の顧客体験をより重視した商品・サービス設計が市場から求められているのです。その実現のためには、顧客の声により注意深く耳を傾けていく必要があるでしょう。

顧客の声を細かく拾い上げるための施策を取り入れている大企業の事例は多数あります。たとえばカルビーであれば生活者に協力してもらうためのサポーター制度を設けています。試作品の試食から評価、そしてPRまでのプロセスに顧客を巻き込むことで、顧客ロイヤルティの向上が視野に入ります。

顧客体験の向上は社員のモチベーションアップになる

顧客体験を高めていくためには、従業員の対人スキルを磨く必要があります。そのためには、教育はもちろんのこと、社員のモチベーションを高める施策が有効です。

たとえばスターバックスでは、顧客の接客に関するマニュアルを設けず、スタッフの自主性や創意工夫を重んじる独自の教育方式を採用しています。この教育方針によって、顧客が喜ぶことを積極的に行うスタッフが育ち、同社の顧客体験を向上させています。よりよい顧客の反応を見たスタッフは、さらに業務のモチベーションを高めるでしょう。この両者の間では好循環が発生するのです。

そうすると、現場の生産性も向上し、企業のブランドイメージを高めながら収益性アップも見込めます。この手法を導入するためには、会社の理念を全社員に浸透させるインナーブランディングの施策が必要な点に注意しておきましょう。

顧客体験は口コミ効果を発揮する

素晴らしい体験をすると、人は他者にその感想を共有したくなるものです。特にSNSなどを通じて発信が容易になった昨今では、その口コミ効果は非常に高く、優れた宣伝効果が期待できます。一般顧客からの口コミは、広告よりも信用できる情報と認識されやすい点もメリットでしょう。

大切なのは、優れた顧客体験が一度きりの偶然ではなく、再現性をもたせるための仕組みです。そのためには、優れたスタッフによる属人的なサービスではなく、より組織的な取り組を行うべきです。取り組みの具体策としては、既に取り上げたメルセデス・ベンツUSAやリッツ・カールトン、スターバックスなどの優良企業を参考にしながら、自社の状況に応じた施策を立ち上げるとよいでしょう。もちろん施策を打ち立てた後のPDCAも忘れずに行う必要があります。

まとめ

企業のマーケティングで重視される顧客体験は、これからモノからコト、そしてトキ消費へと市場のニーズが変化する中で、必ず押さえておきたい考え方です。今回お伝えした内容のポイントをまとめると以下の3点です。

  • 顧客体験とは、商品。サービスの認知から購入、アフターサービスまでの流れの中で、顧客がどのような体験をしているのかを可視化したものである。
  • 顧客体験を高めると、商品・サービスの販促効果や収益アップはもちろん、新商品の開発や社内教育にもメリットがある。

顧客体験を向上させる施策には、時間や労力がかかりますが、その分期待できる効果は多岐に渡ります。顧客体験を高める施策に未着手の企業であれば、まずはインタビューやヒアリングなどを通じて、顧客の声に耳を傾けるところから始めましょう。今回の記事の内容を参考に、ぜひ自社のマーケティングに役立ててください。

本原稿は「顧客を増やす方程式」に掲載しています。サイトではファンマーケティングBtoBマーケティング新規顧客の獲得差別化などの記事をラインナップしています。

>サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

「この価格で本当にオウンドメディができるんですか?」「サブ丸は安価ですね。コンサルが入るのと比較できませんが、一般的な費用の1/4ぐらいじゃないですか」このサービスをローンチする前に相談したマーケティング&コンサルタント会社の担当者から聞いた言葉です。サブ丸はサービス内容と比較して安価かもしれませんが「私たちは値段を売っているのではない。サービスを提供しているのだ」と信念を持って取り組んでいます。

大企業はその企業に応じたマーケティング予算と手法があり、スタートアップ企業や中小企業、あるいはニッチャーには、それぞれに応じたマーケティングや新規開拓の方法があります。企業の成長過程では、取り組みが異なるのは当然ですし、それを構築することが何より重要です。そのお手伝いをするのが私たちの使命です。そして成長すれば、その取り組みコストは回収できるはずです。サブ丸は年間運用で60万円あまりのコストがかかります。そのコストを回収し、さらなる飛躍をめざす企業にご利用いただきたいと考えています。

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