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顧客分析のフレームワークと実践的な活用法

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マーケティング活動にフレームワークは欠かせない

はじめに

企業戦略の根幹である顧客をくわしく分析するために、マーケティングや営業の現場ではさまざまなフレームワークを用います。フレームワークはきちんと使いこなせれば非常に便利なツールです。顧客分析のフレームワークを活用し、理解を深めましょう。

顧客分析とは購買のプロセスを明らかにする

顧客分析とは、顧客の属性や購買行動を明らかにするプロセスです。たとえば、次のような問いに対して答えの手がかりが見つかります。

  • これまで購買に至った顧客に共通する属性はなにか?
  • どのような顧客ニーズに対して響いたのか?
  • 購入に至った決め手は何だったのか?

上記は一例ですが、顧客体験(CX)や顧客価値の改善など、顧客に関する施策を行う前に顧客分析を行います。そしてその結果を軸に、戦略や戦術を検討するのです。

顧客分析で実施すべきポイントをフォーカスすれば、施策の成功率を高めることができ、結果として売上や集客率の向上につながります。

フレームワークとは可視化すること

マーケティングツールとしてのフレームワークは、データやアイデアを体系立てるために共通で使える枠組みを指します。たとえば「3C分析の結果」と言われれば、自社と競合、顧客の3者を検討したことが伝わります。そのため社内の情報共有や社外のプレゼンに使うと、伝えたい情報を共有しやすくなります。

フレームワークにはいくつかのパターンがあり、それぞれ役割が違います。役割については後ほどくわしく解説します。

顧客分析に使う6つのフレームワーク

マーケティングのフレームワークは数多くありますが、その中でも顧客分析に使う代表的なものを6つ紹介します。

  • RFM分析
  • デシル分析
  • CTB分析
  • CPM分析
  • 行動トレンド分析
  • NPS分析

いずれも企業の戦略立案の際に、よく使われる分析方法です。それぞれの考え方をぜひこの機会に把握しておきましょう。

RFM 分析

RFM分析とは、3つの指標をもとに顧客を段階的に分け、グループ化する分析です。それぞれの性質にあったマーケティング施策に生かします。

  • Recency :直近の購入はいつか
  • Frequency:購入頻度はどの程度か
  • Monetary:購入金額はいかほどか

この3つの指標で顧客を分類すると、次のような傾向が見えてきます。

  • Rが高い顧客ほど、将来の収益に貢献する可能性が高い
  • Rが低ければ、FやMが高くても他社へと離脱している可能性が高い
  • Rが同じなら、Fが高いほど常連客になっている
  • Rが同じなら、FやMが高いほど購買力がある顧客と見なせる
  • ただし、RやFが高くても、Mが少ない顧客は購買力が低いと考えられる
  • Fが低くMが高い顧客の場合、Rの高い方が良い顧客と考えられる
  • Fが現状維持もしくは下がっている顧客は、他社へと離脱している可能性が高い
  • RFMすべてが低い顧客は、注力しないという判断も検討

参考:奥瀬喜之 久保山哲二(2012)『経済・経営・商学のための「実践データ分析」』講談社

こうした傾向がわかれば、顧客へのアプローチ改善に役立ちます。

デシル分析

RFM分析の指標のうち、Monetary(購入金額)をさらにくわしく分析する場合にはデシル分析を利用します。デシルという言葉には「10 等分」という意味があり、その名の通り利用額ごとに顧客を10等分します。手順は以下の3ステップです。

  • 購入金額ごとに、顧客を上位から並べる
  • 10 等分になるように顧客をグループ分けする
  • 全体の購入金額に対して、グループごとの合計売上金額をパーセント表示する

RFM分析は、エクセルなど表計算ソフトで簡単に処理できます。導入しやすい顧客分析法ですが、売上のデータ期間を長く取りすぎると分析結果に誤差が生じやすくなります。また、購入金額に絞る分析のため、他の要素を見落とす可能性は否めません。デシル分析を行う際は、できるだけ他のフレームワークも併用しましょう。

CTB 分析

顧客の購買傾向の分析と今後の売れ筋商品の予測を行うのがCTB分析です。CTBは「Category(カテゴリ)」「Taste(テイスト)」「Brand(ブランド)」の頭文字で、顧客をグループ分けします。

CTB分析を活用した有名な事例が、スーパーなどでしばしば近い棚に陳列されているおむつとビールです。おむつを購入する顧客はビールも購入する傾向が強いことがCTB分析によってわかったため、そのような配置の工夫がとられています。

CTB分析を正確に実施するためには、複数商材を横断的したデータが必要です。これらのデータはレジのPOSだけでは集めにくく、必要なデータを集めるまでにはやや手間がかかります。

セグメンテーション分析

セグメンテーション分析は、市場全体を細分化するための手法です。以前から広告業界を中心によく使われてきたのが以下の方法です。

  • 世代別のセグメント
  • 年齢や性別に応じたセグメント

近年ではライフスタイルの個人差が大きく、世代や年齢、性別のセグメントはマーケティング上、その有効性が疑問視されつつあります。

しかし、Facebook広告のようなSNS広告では、所在地や職業、興味・関心趣味、行動、交際関係など非常に細かいセグメンテーションが可能になっています。自社のターゲットがどのような顧客なのかをより注意深く分析する必要が生じています。

もし自社のターゲッティングがぼんやりとしていると感じた場合、セグメンテーション分析を進めながら、ターゲットの見直しするとよいでしょう。

CPM分析

CPM分析とは、購買行動・経過日数・購入頻度を軸として、顧客層のアクティブ度合いを以下の10パターンを目安に区分けする分析方法です。それぞれの層に対して戦略を考えていくための手法です。

  1. 初回現役客:設定した期間内に初回の購入実績がある顧客
  2. よちよち現役客:設定した期間内に2回以上の購入実績がある顧客
  3. コツコツ現役客:設定した金額内で、安定した購入をしている顧客
  4. 流行現役客:短期間で設定した金額以上の購入実績がある顧客
  5. 優良現役客:長期にわたり特定金額以上の購入実績がある顧客
  6. 初回離脱客:設定した期間内の初回の購入後、離脱した顧客
  7. よちよち離脱客:設定した期間内で2回以上購入実績があったが、離脱した顧客
  8. コツコツ離脱客:設定した期間内で安定したリピート購入はあったものの、離脱した顧客
  9. 流行離脱客:短期間で設定した金額以上の購入実績があったが、離脱した顧客
  10. 優良離脱客:長期にわたり特定金額以上の購入実績があったにも関わらず、離脱した顧客

このうち、1~5がアクティブ、6~10が非アクティブの顧客です。それぞれの層に応じた顧客育成(ナーチャリング)法があり、たとえば次のような営業アプローチが考えられます。

  • 初回現役客には、次回利用を促すためのクーポンやキャンペーン展開を仕掛ける。
  • コツコツ離脱客にはアンケートを行い、商品改良に活かしながら、次回購入までのエンゲージメントを設計する。

特に企業にとっては、10の優良離脱顧客は大きな痛手です。5に該当する顧客の顧客体験をいかに高めていくかは営業戦略でも最重要項目の一つでしょう。

行動トレンド分析

アパレル業界のように季節性の強い商品を主に取り扱っている業界であれば、行動トレンド分析はぜひ取り入れたいフレームワークです。具体的なやり方としては

  1. デシル分析やCPM分析などの結果を使い、顧客をグルーピングする
  2. あるグループの購買データを“シーズン”に応じて分析する

2のシーズンは、年単位・曜日単位・分単位などさまざまな軸が考えられます。たとえば、アイスクリームの販売データを年単位で分析すると夏季を中心にヒットしていることがわかります。さらに顧客のグルーピング基準を変えると、北海道在住の顧客であれば真冬もアイスが売れることがわかるかもしれません。このように顧客の行動を分析し、根拠のあるマーケティングを可能にしてくれるのが行動トレンド分析の強みです。

NPS分析

NPS分析は顧客ロイヤルティを測定するためのフレームワークです。「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略であり2003年にアメリカの経営学誌で発表されて以来、一気に広まりました。

具体的な方法は、「あなたはこの商品やサービスを家族や同僚にどの程度すすめたいと思いますか?」という設問を顧客に投げかけ、10段階で回答してもらうというものです。0~6点を付けた顧客を「批判者」、7~8点を付けた顧客を「中立者」、9~10点を付けた顧客を「推奨者」と呼びます。最終的には、以下の計算式でスコアを算出し、顧客ロイヤルティの度合いを数値化します。

推奨者の割合-批判者の割合=NPSスコア

NPSの数値がプラスに転じていれば一定以上のロイヤリティを確保しているといえます。逆にマイナスであれば、ロイヤリティが低下しているため、原因を探って対処する必要があるでしょう。

市場分析と合わせて精度を高める

一般的に市場分析で用いられる「3C分析」「SWOT分析」「STP分析」は、顧客分析の際にも使えるフレームワークです。なぜなら、顧客の集合体が市場であり、顧客分析と市場分析は深く関連しあっているからです。これら3つのフレームワークを顧客分析の精度を高める目的で使う場合、どのような点に注意すればよいかをまとめました。

3C分析

3C分析は「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」という3要素を分析する手法です。本来は、自社の状況分析のために用いますが、顧客分析に用いる場合は、まず主語を「Customer(顧客)」に置き換えましょう。その上で、次のような項目中心に分析してみるとよいでしょう。

  • Customer(顧客):メイン顧客の特性、購買力、ニーズやインサイト
  • Competitor(競合):顧客から見たメリット・デメリット
  • Company(自社):顧客から見たメリット・デメリット

顧客の項目については、前述した顧客分析のフレームワークから得た情報を整理してまとめれば問題ありません。そのうえで、顧客視点から競合や自社がどう見えているのか、3C分析の枠組みで整理してみると、自社の訴求ポイントが別の角度から見えてきます。

SWOT分析

SWOT分析は、自社が置かれている現状を把握するために、内部環境と外部環境のプラス要因・マイナス要因を整理して分析する手法です。内部環境のプラス要因は「Strength(強み)」、マイナス要因は「Weakness(弱み)」で、外部環境のプラス要因は「Opportunity(機会)」、マイナス要因は「Threat(脅威)」に区分されます。

この枠組を顧客分析の視点で使う場合、3C分析と同じように主語を顧客にしましょう。顧客にとっての内部要因と外部要因、そして顧客目線では機会と脅威がどのように映るのかを検討します。顧客から直接インタビューを行い、情報を補完できればベストです。

STP分析

STP分析は市場を細分化する際に使うフレームワークです。市場分析では、自社の現状(商品やサービス)、そして将来のポジショニングの検討を行います。必要な項目は「セグメンテーション(市場細分化)」「ターゲティング(狙う市場の決定)」「ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)」の3つです。このフレームワークを顧客分析と組み合わせる場合はどのようにすればよいでしょうか?

顧客分析の6つのフレームワークの内容をもとに、まずは「セグメンテーション」を複数パターン用意し、それぞれを見比べて、どの市場が最も自社の強みが活きるのかを考えましょう。セグメンテーションの精度が高まり、ポジショニングもより高精度に計画できます。

フレームワーク分析の注意点

さまざまなフレームワークを使って分析をする際、重要なのは分析の目的です。分析結果による戦略、達成すべきゴールなど、目的を見失うと不明瞭な分析データが増え、効果を得られません。本章では、フレームワークの選定理由を踏まえ、分析効果を高めるための基礎知識をお伝えします。

フレームワークの分類

フレームワークにはそれぞれ役割があり、その真価を発揮できる領域も異なります。たとえば次のような基準から、どのフレームワークが適しているのかを考えましょう。

  • 思考を整理したいのか、データを整理したいのか、両方か
  • 現場のマーケティングに使うのか、経営戦略に使うのか、それとも販促や実行管理なのか
  • 対象となるのは自社か、顧客か、それとも市場や競合か

場合によっては、フレームワークを使わないほうがよいケースもあります。たとえばブレインストーミングの場では、フレームワークがあると自由な発想の妨げになってしまいます。

それぞれのフレームワークの特徴を理解し、自分の目的に合ったフレームワークを活用しましょう。

目的に応じてフレームワークを絞り込む

マーケティングのフレームワークを実践的に使うには、自分が人に説明できるくらい理解ができているフレームワークを重点的に使う方が効率的です。

今回紹介したような頻出のフレームワークの概要をまず押さえ、その中から自分の業務でよく使うものを集中的に学び、参考書などを一切見なくても使いこなせるレベルにしておくとよいでしょう。それだけでも十分に有用ですし、結論までの時間短縮や生産性の向上が期待できます。

まとめ

顧客分析におけるフレームワーク活用のポイントをまとめると、以下の3点です。

  • 顧客分析とは、顧客の属性や購買行動を明らかにして、顧客に対して実施するさまざまな施策の効果を高めるための手法である
  • 顧客分析に用いる代表的なフレームワークは6つあり、通常は市場分析に用いる3C分析やSWOT分析、STP分析も組み合わせて活用できる。
  • フレームワークに振り回されないためには、目的意識をもって、それぞれの特徴や強みをふまえ、自分の理解度が納得できるもののみを使うとよい。

最初は難しく感じるかもしれませんが、フレームワークを使いこなせるようになると、顧客へのアプローチの幅が広がります。顧客分析のフレームワークがよくわからなくなったら、ぜひ今回の記事を見返してみてください。

原稿は「顧客を増やす方程式」に掲載しています。サイトではファンマーケティングBtoBマーケティング新規顧客の獲得差別化などの記事をラインナップしています。

>サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

「この価格で本当にオウンドメディができるんですか?」「サブ丸は安価ですね。コンサルが入るのと比較できませんが、一般的な費用の1/4ぐらいじゃないですか」このサービスをローンチする前に相談したマーケティング&コンサルタント会社の担当者から聞いた言葉です。サブ丸はサービス内容と比較して安価かもしれませんが「私たちは値段を売っているのではない。サービスを提供しているのだ」と信念を持って取り組んでいます。

大企業はその企業に応じたマーケティング予算と手法があり、スタートアップ企業や中小企業、あるいはニッチャーには、それぞれに応じたマーケティングや新規開拓の方法があります。企業の成長過程では、取り組みが異なるのは当然ですし、それを構築することが何より重要です。そのお手伝いをするのが私たちの使命です。そして成長すれば、その取り組みコストは回収できるはずです。サブ丸は年間運用で60万円あまりのコストがかかります。そのコストを回収し、さらなる飛躍をめざす企業にご利用いただきたいと考えています。

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