差別化戦略に成功した企業事例10選

差別化戦略に成功した企業事例10選

  • 2022年3月26日
  • 2023年2月10日
  • 差別化
差別化戦略に成功した企業事例10選
差別化戦略に成功した企業事例を参考に自社の戦略を作成しよう。

はじめに

アメリカの経営学者、マイケル・ポーターが提唱した差別化戦略とは、競合他社との間に価格やコストによらない独自の強みを打ち出し、商品が高くても売れる状況を作り出す戦略です。自社で差別化戦略を取り入れたい場合、すでに成功している企業の事例を研究し、その戦略の考え方や進め方を事前に学んでおくと、戦略の幅が広がります。今回は、差別化戦略で成功した企業事例を10選ご紹介します。

スターバックス

1996年8月にアメリカから日本に初上陸したスターバックスは、年々規模を拡大し、2021年には1,685店舗までその数を増やしました。スターバックスの差別化戦略の要となっている同社の理念が「サードプレイス」です。サードプレイスとは、自宅や職場とは違い、自分らしい時間を過ごし、ゆったりと寛ぐことができる第三の場所のことです。スターバックスは、このコンセプトを軸に、他社との差別化を推し進めました。

たとえば、女性客にとってのサードプレイスを作り出すため、スターバックスは一号店から全店禁煙を徹底しています。一号店が日本に出店した1996年頃、禁煙のカフェは非常に珍しい存在でしたが、スターバックスは他店に先駆けてタバコの煙を嫌う女性客に寄り添う姿勢を貫き、差別化に成功しました。また、当時のカフェ業界でトップシェアを握っているドトールコーヒーと差別化すべく、店内Wi-Fiの整備やコンセント提供を積極的に行い、オフィスユース目的の顧客集客を実現しています。

モスバーガー

ファーストフード業界第2位の地位を占めているモスバーガーは、日本発祥のハンバーガーチェーン店です。同社は業界1位のマクドナルドと差別化するために、「高価格な分、高品質」というポジションを追求し、コストを掛けてでも商品のおいしさにこだわっています。

同社の経営戦略は、「差別化」「地域密着」を基本として、その上に「おいしさ」「安全・安心」「多様化」「利便性」「店舗体験価値」「輝く人」という6つの柱を置いています。お肉のようなソイパティを取り入れたり、野菜たっぷりのグリーンバーガーをリリースしたりと「おいしい」商品を開発していくことで、同社は社会の変化に左右されない堅調な売上を確保しています。モスバーガーが45周年を迎えた際のキャッチコピーである「日本のハンバーガーを、もっとおいしく。」のとおり、日本人の口に合うラインナップを打ち出し、マクドナルドとは全く異なる世界観で顧客を引きつけています。

ユニクロ

ヒートテックなどさまざまなヒット商品を手掛けているユニクロは、アパレル業界の中で独自の差別化戦略を採用しています。従来のファッションブランドは、ファッション性や流行を重視しており、着心地のよさは二の次になりやすい傾向がありました。しかし、ユニクロはあくまでもシンプルに、そして普段遣いとして重要な機能性を重視した「着やすい」品ぞろえを徹底したのです。その背景には、顧客からよせられた要望を検証・分析し、商品の開発や改良に直接活かす「カスタマー・クリエーション」へのこだわりがあります。同社は商品企画から製造、物流、販売までを一貫して自社で行うコストリーダーシップ戦略を行っており、顧客の声に基づいた商品開発を低コストで進められるという強みがあります。価格・コスト面の強みと、ブランディングとしての差別化が上手くかみ合った戦略といえるでしょう。

ニトリ

ユニクロと同じく企画から製造・販売まで一貫した体制を敷き、コストリーダーシップ戦略をとっている家具・インテリアメーカーのニトリの事例も検討していきましょう。ニトリの強みの一つが、驚異的な利益率の高さです。2021年2月決算では、総売上高総利益率が52.8%、経常利益率が18.2%という数字を記録しています。家具・インテリア業界の平均数字は、粗利益率40%、経常利益率5%前後であり、比較するとニトリの収益率のよさは明らかです。この高い利益率の背景には、商品企画から原材料の仕入れ、輸入、生産・販売、商品搬送までをほぼ自社で手掛け、物流センターや配送拠点も保有している同社の製造小売体制があります。家具インテリア業界でここまで一貫した体制を整え、かつ全国展開を行っている企業は他にありません。そのため高品質な商品を安定価格で供給でき、コスト面だけではなく他社にはないブランドの信頼感を醸成しています。

ローソン

コンビニエンスストア業界の中でも特に独自のスイーツブランド「ウチカフェ」で認知を広げたローソンは、競合との差別化に成功した企業です。コンビニスイーツの先駆けとして、最初にブランディングを確立したのは、サークルKサンクスでした。ところが、同社のブランド「シェリエドルチェ」がファミリーマートに買収された後に消失したため、その空白を埋めるかたちで、ローソンのスイーツブランド路線が定着しました。それまでローソンは大手の中でも最も強みに乏しいコンビニといわれていましたが、だからこそ新商品の開発に伴う大胆な方針変更とブランディングが功を奏したといえるでしょう。

トヨタ

国内の自動車業界1位メーカーであるトヨタは、トップシェアの地位に甘んじることなく、競合他社との差別化戦略を積極的に展開しています。環境保護への配慮から、近年の自動車業界では電気自動車(EV車)が急速に普及しています。電気自動車にシフトしていく流れを先取りし、トヨタでは車に搭載する電池の開発・製造を進めてきました。同社は車両と電池の一体開発を推進しており、電池コストを半減以下にまで抑えるべく、使用する材料や構造の開発に注力し続けています。将来的には、安全・長寿命・高品質・良品廉価・高性能という5つの要素がハイレベルでバランスがとれたトヨタならではの電気自動車を量産する体制が整うでしょう。この電気自動車の開発・製造の取り組みによって、価格・コスト面の強みだけではなく、地球環境への配慮や省エネルギーの面からも競合との差別化を行い、顧客に訴求していく戦略と考えられます。

マクドナルド

ファーストフード業界第1位のマクドナルドは、コロナ禍による外出自粛の影響を受けて一時的に売上を大幅に落とし、その後V字回復を見せたことで知られています。客数自体は前年同月比で20%近く減少しているにもかかわらず、30%以上客単価を向上させて収益率を高めました。

同社のターゲット顧客はファミリー層です。そのため、たとえば公式アプリで配信しているクーポンに「2人用セット」「3人用セット」といった他社ではあまり見かけない複数名向けのクーポンを用意し、ターゲットにお得感を訴求しています。また、おもちゃやキャラクターグッズを組み合わせたハッピーセットには、その時々の流行を積極的に取り入れ、子どもが行きたがる企画展開を行っています。ほかにも、江崎グリコのプッチンプリンとコラボしたシェイクをリリースするなど話題づくりが非常に上手く、「家族で行くならマクドナルド」というブランドの差別化戦略を多面的に展開しています。

任天堂

ゲームメーカーの任天堂は、世界中のユーザーを対象に、競合が少ない新たな市場を生み出す商品を開発・製造することで、他社との差別化を図っています、いわゆる、ブルー・オーシャン戦略です。代表的な例として、携帯用ゲーム機のNintendo Switchが挙げられます。Nintendo Switchの特徴は次の3つの楽しみ方ができることです。

  • テレビモード(従来の据置タイプのゲーム機と同様)
  • テーブルモード(画面をシェアして家族や友人と遊べる)
  • 携帯モード(外に持ち出してゲームを楽しめる)

したがって、携帯ゲーム機だけではカバーできない顧客層の取り込みに成功しました。加えて、ダンボールでコントローラーを自作し、家族で工作を楽しめるNintendo Laboを企画。子どもがゲームをすることに気乗りしない母親層も取り込んで、家族全員が楽しめる時間を提供しました。このようにゲームに関心が薄い層を積極的に取り込む施策によって、任天堂はビジネスの収益性を高め、ゲーム市場での優位性を確保しました。

無印良品

2000年代当初は業績が大きく悪化し、いっときは38億円もの赤字を抱えていた無印良品ですが、同社が経営を立て直した背景には他社との差別化戦略がありました。無印良品がこだわったのは、徹底した仕組み化と無駄な努力の削減でした。当時の無印良品が抱えていた課題の一例を挙げると、以下のような問題がありました。

  • 社内に蔓延していた満身やおごり
  • 急速に進んでいた大企業病
  • 焦りからくる短期的な対策
  • ブランドの弱体化
  • 戦略の間違い
  • 仕組みと風土ができていないうちの社長交代

これらを改善するために、同社では個人の経験や勘に頼らない改善の仕組みを作りました。その一つが、全ての仕事に対して用意されているMUJIGRAMと呼ばれるマニュアルです。ボリュームたっぷりのマニュアルを用意しておくことで、優れたノウハウを社内で共有し、かつ個々人がマニュアルベースで改善に取り組める環境を作りました。また行き過ぎた報連相をなくし、業務時間内の生産効率を高めるなど、労務体制も一新しました。

その結果、本来のブランド力を回復し、無印良品のよさを全面に打ち出したマーケティング施策の展開によって、他社との差別化と売上の改善を図れたのです。

ソニー

電気機器の製造・販売など多様な業界に進出しているソニーは、「人がやらないことをやる」という価値観を軸に、他社との差別化を行っています。たとえばすでに成功を収めているプロダクトカテゴリーであっても「先取の精神」で再定義したり、新たなイノベーション創出に挑戦したりと、先進的な取り組みを会社全体で推奨する風土があります。

その一例が、同社が開発し圧倒的なシェアを獲得したウォークマンです。当時主流だったカセットオーディオプレーヤーの常識だった内蔵スピーカーや録音機能をあえて取り払い、「非常識」なモノづくりを行うことで、業界内でのソニーブランドを確立しました。

同社が大切にしているのは、人工知能(AI)でも決して真似できない人間の経験や学びに基づく本質的な智慧です。単なるデータを情報に変え、さらに知識とした上で、経営資源として智慧を蓄積・活用することで他社が真似できない商品開発を可能としているのです。

まとめ

差別化戦略によって成功を収めている企業事例10選を振り返ると、以下のような内容が学べました。

  • 各社の差別化戦略は、それぞれの企業の風土や価値観に根付いたものが多く、ぶれない世界観が顧客の心を惹きつけている
  • 差別化戦略は一般的に業界ナンバー2以下の企業が行うものと言われているが、トップシェアの企業も差別化戦略を積極的に実施している
  • あらゆる差別化戦略は、顧客や市場を研究し、自社リソースや課題を見直すところから始まる

大企業の事例ばかりでご紹介しましたが、それぞれの戦略のエッセンスは資本力や業界に関係なく参考にできるでしょう。ぜひ今回の記事を参考に、差別化戦略の学びを実践的に深めて頂ければと思います。

>サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

「この価格で本当にオウンドメディができるんですか?」「サブ丸は安価ですね。コンサルが入るのと比較できませんが、一般的な費用の1/4ぐらいじゃないですか」このサービスをローンチする前に相談したマーケティング&コンサルタント会社の担当者から聞いた言葉です。サブ丸はサービス内容と比較して安価かもしれませんが「私たちは値段を売っているのではない。サービスを提供しているのだ」と信念を持って取り組んでいます。

大企業はその企業に応じたマーケティング予算と手法があり、スタートアップ企業や中小企業、あるいはニッチャーには、それぞれに応じたマーケティングや新規開拓の方法があります。企業の成長過程では、取り組みが異なるのは当然ですし、それを構築することが何より重要です。そのお手伝いをするのが私たちの使命です。そして成長すれば、その取り組みコストは回収できるはずです。サブ丸は年間運用で60万円あまりのコストがかかります。そのコストを回収し、さらなる飛躍をめざす企業にご利用いただきたいと考えています。

CTR IMG