顧客ロイヤルティ

顧客ロイヤルティを高めるメリットと戦略5選

顧客ロイヤルティ
顧客ロイヤルティ戦略は企業の成長には不可欠

はじめに

企業の販売戦略で重要な課題は、既存顧客のリピート率向上です。新規顧客の集客と比べて、既存顧客の集客にかかるコストは5分の1ですみ、しかも顧客が熱心なファンになってくれると、周囲への波及効果も期待できるからです。顧客をファン化する施策に欠かせない概念である「顧客ロイヤルティ」について説明します。

顧客ロイヤルティとは

顧客ロイヤルティとは、特定のブランドや商品、あるいはサービスに対して顧客が寄せる「信頼」や「愛着」のことを指します。英語で忠誠心を意味する“Loyalty”を由来としており、企業の販売戦略を立てる上で、非常に重視される考え方です。

顧客ロイヤルティを向上させる方法とは

顧客ロイヤルティは、心理と行動の2種類に分かれます。

  • 心理面ロイヤルティ:企業・ブランド・商品に対するプラス感情
  • 行動面ロイヤルティ:メリットを理由としたリピート購入

いずれにせよ顧客ロイヤルティが多いと、企業にとっては以下のメリットがあります。

  • 顧客の利用頻度や一人当たりの単価が上がる
  • 口コミや紹介が起こりやすくなる
  • 集客やマーケティングに協力してもらいやすくなる

ロイヤルティを高めるための具体的な施策をご紹介します。

顧客体験に新たな考えを付加する工夫をこらす

顧客ロイヤルティを高めていくためには、一般常識や期待値を超えた顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を意図的に作り出す必要があります。顧客体験とは、特定のブランドや商品に対してどのようなタッチポイントでどんな印象を受けるのか、一連の流れを見える化したものです。顧客が抱いている「この商品(サービス)は大体こんなものだろう」という期待値を上回るには、大別して2つのアプローチがあります。

  • 機能を高める
  • 切り口を変える

機能をブラッシュアップするためには多くの時間やコストがかかります。そのため切り口を変えるためのアイデアを新たに探す方が効率的です。たとえば、顧客に送っているDMをあえてきれいなデザインではなく手書きに変えてみるだけでも、新たな顧客体験につながる可能性があります。顧客の属性やニーズと方向性のずれないように留意しつつ、さまざまなアイデアを取り入れて、顧客体験の価値を高めましょう。

顧客価値を定義しCSを高める

「自社で手掛けている商品は、顧客にとってどんな価値があるのか」という問いは、マーケティング戦略の土台です。顧客ロイヤルティを高めるための施策にも、顧客価値の定義は外せません。顧客価値の見直しを行うことで、顧客満足度と顧客ロイヤルティがどちらも高まりやすくなります。

代表的な事例は、ネスレ日本株式会社の「ネスカフェアンバサダー」です。職場内にコーヒーマシンを置くこのサービスを展開するにあたり、ネスレ日本は「職場で求められるコーヒーの役割」を再定義しました。そうして「スタッフ間の会話を弾ませてくれるコーヒータイムこそが顧客価値」としてサービスを広めた結果、ネスカフェアンバサダーは大ヒットを収めたのです。

顧客価値を見直す際には、さまざまな角度から物事を見るラテラルシンキング※を活用し、なるべく固定概念を取り払うのがポイントです。

※「物事を多角的に考察する」「新しい発想を生み出す」ための思考法

顧客のインサイトを探りサービスに結びつける

顧客ロイヤルティを高めるには、顧客の無意識の部分にも目を向ける必要があります。その最たるものが、本人すらも気づいていない欲求であるインサイトです。インサイトを見出すためには、顧客の声に耳を傾け、言葉にならない部分を類推する必要があります。商品の内容とインサイトが合致した時、爆発的な大ヒットが生まれ、顧客ロイヤルティの向上へとつながります。

わかりやすい事例が「オフィスグリコ」でしょう。グリコのお菓子箱を富山の置き薬と同じやり方でオフィス内に設置するサービスですが、これが「頭を使った仕事で疲れた後、すぐに糖分が摂りたい」というサラリーマンのインサイトとぴったりはまり、開始から13年後には53億円の大きなビジネスに成長しました。2007年にはビジネスモデル特許を取得し、まさに顧客ロイヤルティの大幅な向上を成し遂げたのです。

顧客とのエンゲージメントを明確にする

顧客ロイヤルティを高めるためには、顧客との距離感を上手に設計する必要があります。そこで見直したいのが、顧客との関係性を深めるタッチポイントです。タッチポイントには、次の2種類のタイプがあります。

  • 顧客へと積極的にアプローチできる「プッシュ型」
  • 顧客からのアクションを引き込む「プル型」

顧客のライフスタイルに合わせて、この2つのタイプを組み合わせ、「この企業と長く付き合えばメリットが大きい」と印象付けていくのが、エンゲージメント設計の基本です。

たとえば、ECサイトなどでよくみられる購入金額や回数に応じた顧客のランク付けが好例でしょう。特定のランク以上の顧客限定で特別セールのお知らせが届いたり、オプションサービスが無料になったり、といった仕組みがあれば、リピート率が上がり、エンゲージメントやロイヤルティも高まります。

顧客囲い込みによるブランド価値を増大する

顧客のエンゲージメントが高まる仕組みを作っていくと、やがて顧客の囲い込みが実現します。そうするとブランド価値も高まるため、顧客ロイヤルティが向上します。リクルートが運営している美容室のポータルサイト、HotPepperBeautyはこの典型例です。

HotPepperBeautyで採用している仕組みは、同サイトからのネット予約に限り、来店時の支払額から2%がポイントとして還元されるというものです。常に2%の割引が受けられる状態のため、顧客はHotPepperBeautyからの予約を積極的に行います。ユーザーが増えれば、HotPepperBeautyに登録する美容室側のメリットが高まり、結果プラットフォームとしての規模も拡大していくわけです。ブランドの地位が高まれば、エンドユーザーのロイヤルティも高まります。

コンテンツマーケティングで情報を提供する

良質なコンテンツを発信するコンテンツマーケティングは、顧客ロイヤルティを確実に高められる手法です。たとえば、カタログハウスが季刊で発売している雑誌「通販生活」は全ページが商品の紹介にもかかわらず、定期購読する顧客が多いことで知られています。掲載している商品の需要を問わず、「通販生活」が好きで購読し続ける顧客は、心理でも行動面でもロイヤルティが高い状態といえるでしょう。

この状態は、より低コストで運用できるSNSでも達成できます。たとえば、フォロワー数が280万人を超える無印良品のインスタグラムは、商品に関する動画など週30本ペースでアップしており、ブランドイメージにふさわしい余白を活かした投稿(ユーザーが想像する)が多くのファンを集めています。

コンテンツマーケティングの場合、コンテンツの品質が低いと逆にロイヤルティを低下させることがあります。その点にはくれぐれも注意しましょう。

顧客ロイヤルティを向上させるメリットとは

顧客ロイヤルティの向上は企業にとって大きなメリットです。顧客一人当たりの購入額が増えるのはもちろん、さまざまな利益を長期的にもたらします。とはいえ、顧客ロイヤルティは可視化しにくく、コントロールが難しい概念でもあります。顧客ロイヤルティを高めるメリットと合わせて、具体的な施策のポイントをまとめました。

継続的な購入や利用促進につながる

顧客ロイヤルティのうち、特に心理面ロイヤルティが高い企業の場合、競合との価格競争から脱出できるというメリットがあります。ロイヤルティが高い顧客は、他社になびかず、継続的にその企業の商品を購入・利用し続けてくれるからです。地理的条件などに由来する行動面ロイヤルティだけだと、たとえばより近くの店舗ができれば優位性が覆ってしまうケースもあります。心理面ロイヤルティをきちんと高めるためには、Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)、通称NPSの導入がおすすめです。「あなたがこの企業(製品/サービス/ブランド)を友人や同僚に薦める可能性は、どのくらいありますか?」の質問に11段階で回答してもらい、指標とするのがNPSの手法です。顧客へのアンケートを行う際にはぜひ取り入れましょう。

顧客単価の向上や生涯購入額が増大する

ロイヤルティが高い顧客は、そのブランドの商品を次から次へと購入する傾向があります。そのため顧客単価が上がり、LTV(生涯顧客価値)も増大します。わかりやすい例は、Apple社の製品のファンでしょう。スマートフォンはiPhone、パソコンはMacBook、時計はApple Watchというように、どんな身の回り品でもApple社の製品なら買うという状態であれば、その顧客が一生涯にAppleに支払う金額はどんどん増えていきます。

このロイヤルティが高い状態をキープするためには、顧客の期待に沿った商品作りの継続が必要です。Apple社のケースであれば、創設者のスティーブ・ジョブズの哲学である「ユーザー体験の質への徹底的なこだわり」の追求や、「シンプル」で「美しい」ブランドイメージの維持が常に求められます。

SNSなどを通じた拡散効果が考えられる

顧客ロイヤルティの高いファンは、誰に頼まれなくても、自分が商品を使った感想を周囲に積極的に紹介していく傾向があります。最近ではTwitterやインスタグラムなどのSNS でも拡散できるため、その波及効果はさらに高まっています。

したがって、ロイヤルティの高い顧客が拡散しやすい仕掛けを作っておくと、非常にコストパフォーマンスに優れた宣伝効果が期待できます。もしリアル店舗であれば、インスタ向きの撮影スポットを用意したり、タグ付けで店舗を紹介した顧客にクーポンなどをサービスしたりといった企画が考えられます。そういった企画を最大限に活用するためにはSNSを事前に自社で運用し、アカウントを育成しておくのが理想的です。組織内での運用がどうしても難しい場合は、信頼できる外部業者にSNS運用を委託する手もあります。

新商品の紹介が容易にできる

顧客ロイヤルティが高い顧客は、開発中の試作品やリリース直後の新商品に対して「まず試してみよう」と考えます。そのため、アンケートやヒアリングを行う際、顧客ロイヤルティの度合いによって、協力者の集まりやすさが変わるのです。

可能であれば、商品開発の初期時点から関わってもらうことで、顧客ロイヤルティを高めつつ、製品の質を高めていくのが望ましいでしょう。そうすれば新商品のリリース時点で、顧客の口コミ効果による初速が大いに期待できます。

リリース後の商品改良に顧客の声を徹底して活かしているケースとしては、タカラトミーの製品「せんせい」の事例があります。同社では、発売後40年以上経った今でも毎週消費者を呼び、商品の遊び方や不満を聞き取っています。こうした地道な改良を続ける姿勢がロングヒットを作り出し、同時に顧客ロイヤルティを高めているのです。

商品やサービスのリピート購入・利用が促進される

ロイヤルティの高い顧客は、いわゆる「なじみ客」になってくれるため、同じ会社から何度も商品をリピート購入してくれます。こういった顧客は、多少の値上げや不具合でも他社に流れにくいため、売上の基盤を成します。

利益率29%・リピート率7割という驚異的な実績をもつ北の達人コーポレーションを例に見ていきましょう。健康食品などを手掛ける同社の非常に高いリピート率の秘訣は、商品のクオリティはもちろんのこと、顧客のインサイトに沿ったマニュアル作りやパーソナライズしたメッセージの工夫などだといわれています。

お客様の購買履歴と購買に関するさまざまな購買データを整理し、いかに顧客一人ひとりに寄り添った価値が提供できるか。顧客ロイヤルティを高いレベルで維持するためには、CRM(顧客関係管理)が必須です。

まとめ

今回の記事の内容をまとめると、顧客ロイヤルティを高めるメリットや具体的な施策については次のような内容が分かりました。

  • ロイヤルティを高めることで、リピートで購入しながら他者にも宣伝してくれる顧客の力を借りることができ、協業他社に対する優位性になる。
  • 顧客ロイヤルティを高めるためには、まず顧客の価値観やインサイトを把握するためのタッチポイントを確保し、その顧客層に合わせた発信やサービス開発が必要。
  • 顧客ロイヤルティが高まると、売上アップや製品力アップ、認知アップなど企業にとってさまざまなメリットが期待できる。

顧客ロイヤルティを向上させる施策は、顧客満足(CS)や顧客体験(CX)など他のマーケティングの概念とも密接な関わりがあります。もしこの記事を読んで、さらに理解を深めたいと思ったら、別の記事もぜひチェックしてみてください。

本原稿は「顧客を増やす方程式」に掲載しています。サイトではファンマーケティングBtoBマーケティング新規顧客の獲得差別化などの記事をラインナップしています。

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サブ丸はスタートアップ企業やニッチャー向き

「この価格で本当にオウンドメディができるんですか?」「サブ丸は安価ですね。コンサルが入るのと比較できませんが、一般的な費用の1/4ぐらいじゃないですか」このサービスをローンチする前に相談したマーケティング&コンサルタント会社の担当者から聞いた言葉です。サブ丸はサービス内容と比較して安価かもしれませんが「私たちは値段を売っているのではない。サービスを提供しているのだ」と信念を持って取り組んでいます。

大企業はその企業に応じたマーケティング予算と手法があり、スタートアップ企業や中小企業、あるいはニッチャーには、それぞれに応じたマーケティングや新規開拓の方法があります。企業の成長過程では、取り組みが異なるのは当然ですし、それを構築することが何より重要です。そのお手伝いをするのが私たちの使命です。そして成長すれば、その取り組みコストは回収できるはずです。サブ丸は年間運用で60万円あまりのコストがかかります。そのコストを回収し、さらなる飛躍をめざす企業にご利用いただきたいと考えています。

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