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健康サプリのファンコミュニティ実践7ステップ|味の素・カゴメなど企業事例と法規制の注意点

健康サプリメントや健康食品の市場では、似た成分・似た価格の商品が並び、広告で差をつけることが年々難しくなっています。しかも効果の表現には法律上の上限があるため、「どれだけ効くか」を競う訴求にも限界があります。そこで注目されているのが、商品を買ってくれる「顧客」と長く関係を育て、ブランドを応援してくれる「ファン」へと変えていくファンコミュニティマーケティングです。この記事では、健康サプリ・健康食品ブランドを想定して、熱量の高いファンを育て、継続購入と商品改善につなげるための実践法を7つのステップで解説します。味の素、ベースフード、カゴメ、無印良品の公式事例に加え、サプリならではの法規制とリスク管理のポイントもまとめました。コミュニティマーケティング全体の考え方から知りたい方は、コミュニティマーケティングの基礎と最新事例の解説もあわせてご覧ください。

目次

なぜ競争の激しい健康サプリ市場でファンコミュニティが効くのか

ファンコミュニティはどの業界でも活用できますが、健康サプリ・健康食品とは特に相性がよい手法です。理由は大きく3つあります。

効果の訴求だけでは差別化しにくい

健康食品の広告では、効果を大げさに見せる表現が景品表示法や健康増進法の規制対象になります。消費者庁は健康増進法(誇大表示の禁止)のページで、健康食品に関する留意事項や、インターネット上の虚偽・誇大表示への改善指導の状況を公表しています。つまり「言えること」には上限があり、広告コピーの強さだけで競合に勝ち続けるのは現実的ではありません。一方で、ブランドの姿勢、つくり手の顔、同じ目的を持つ仲間とのつながりといった価値は、表現の上限に縛られずに積み上げられます。これがコミュニティの強みです。

定期購入モデルと相性がよい

サプリや健康食品は毎日続けて摂るものが多く、定期購入(サブスクリプション)で販売されるのが一般的です。売上を左右するのは新規獲得よりも「続けてもらえるかどうか」であり、解約の多くは「効果を実感する前にやめてしまう」「飲み忘れて在庫がたまる」といった、続けるうえでのつまずきから生まれます。コミュニティで使い方のコツや続け方を共有し、同じ目標を持つ仲間と励まし合える場があれば、こうしたつまずきを減らせます。定期通販でLTVを高める顧客接点の設計やサブスクリプションの継続率を上げる施策と組み合わせて考えると効果的です。

「信頼できるかどうか」が選ばれる理由になった

2024年の紅麹関連製品による健康被害を受け、機能性表示食品制度は大きく見直されました。消費者庁の資料「機能性表示食品の今後について」によると、医師の診断による健康被害情報の提供義務化は2024年9月1日に施行され、錠剤・カプセル剤などサプリメント形状の製品へのGMP(適正製造規範)の適用と、容器包装の表示方法の見直しは2026年9月1日から適用されています。消費者が「このメーカーは信頼できるか」を以前より意識するようになった今、つくり手と生活者が顔の見える形で対話するコミュニティは、ブランドへの信頼を積み上げる手段としても意味を持ちます。

ファンコミュニティを始める前に押さえたい3つの原則

人を集めるだけでは、ファンが熱くなるコミュニティにはなりません。成功の鍵は、始める前の「設計思想」にあります。ここでは、コミュニティのしっかりとした土台になる3つの原則を紹介します。

原則1:まず与える「Give, Give, Give, Take」

最も大切な心構えは、「与えること」から始める姿勢です。すぐに売上や成果(Take)を求めず、ファンにとって価値のある情報や体験、交流の機会を惜しみなく提供(Give)し続けます。サプリであれば、原料の産地や品質管理の裏側、開発者による成分の基礎知識講座、管理栄養士に食生活を相談できる会などが考えられます。「このコミュニティに参加していてよかった」と感じてもらえる価値の積み重ねが信頼を育み、結果として継続購入や応援(Take)につながります。ファンベースという考え方も、この原則と同じ方向を向いています。

原則2:ファンが主役の「共創」の場にする

ファンコミュニティは、企業が一方的に情報を流す場所ではありません。主役はあくまでファン自身です。ファン同士が交流し、ブランドに意見を伝え、ときには新しい商品のアイデアを一緒に考える。そんな「共創(Co-creation)」の場をつくることが活性化の秘訣です。企業は「先生」ではなく、「ファシリテーター」や「舞台装置」に徹する意識が大切です。ファンが「自分たちの手でこのブランドを育てている」という当事者意識を持てたとき、熱量は最も高まります。後ほど紹介する味の素の事例は、健康関連商品で共創を形にした好例です。

原則3:ビジネスゴールとコミュニティの目的をつなげる

「ファンと仲良くなれればよい」というだけでは、事業として長続きしません。コミュニティの目的(例:継続意欲の向上、UGCの創出、商品改善アイデアの収集)と、会社のビジネスゴール(例:定期継続率の改善、LTV向上、新商品の開発成功率の向上)をしっかり結びつけておくことが欠かせません。この二つがずれていると、「盛り上がってはいるけれど、売上にはつながらない」という状態に陥りがちです。最初に連携を設計しておけば活動の方向性がぶれず、社内の理解も得やすくなります。

健康サプリ・健康食品のファンコミュニティ企業事例4選

ここからは、健康関連の商品を扱う企業を中心に、公式情報で内容を確認できるファンコミュニティの事例を紹介します。規模や目的の異なる4件を選んでいるので、自社の状況に近いものを参考にしてください。

事例主な参加者コミュニティの主な役割参考にしたいポイント
味の素「アミノバイタル」トライアスロンなどに取り組むアスリート練習会・セミナー、商品の共同開発配合・味・パッケージまで対話で決める共創
ベースフード「BASE FOOD Labo」継続コース会員改善報告、栄養相談、レシピ共有、アイデア投稿定期購入者限定にして継続を支える
カゴメ「&KAGOME」カゴメ商品のファンレビュー、レシピ、投票、社員からの発信10年以上続く運営と参加のしやすさ
無印良品「IDEA PARK」無印良品の利用者商品リクエストの投稿と回答の公開要望の進捗をステータスで見せる透明性

事例1:味の素「アミノバイタル」|1,400名超のファンと共同開発した新製品

味の素株式会社は、アミノ酸補給をサポートする「アミノバイタル」ブランドで、同社初のファンコミュニティ共創型製品「アミノバイタル ONE」ゼリードリンクを2026年4月1日に発売しました。同社のアミノバイタル ONE発売の公式リリースによると、開発のパートナーは2024年に発足したファンコミュニティ「アミノバイタル アスリートクラブ」で、トライアスロンを中心にスポーツを楽しむ1,400名以上が所属しています。

開発は、メンバーへのヒアリングと対話から始まりました。インタビューやアンケートで「持続的なエネルギー源」「電解質補給」「リカバリーのサポート」というニーズを掘り起こし、フレーバー投票や試飲会、開発ミーティングへの参加、パッケージデザインの意見募集まで、配合・味・パッケージのすべての段階でメンバーと対話を重ねています。発売前日にはファン向けのお披露目イベントを開き、クラブのメンバーやアンバサダーなど約200名が集まりました。

この事例から学べるのは、コミュニティを「感想を集める場」にとどめず、開発プロセスそのものにファンを招き入れている点です。自分の声が製品になった体験をしたメンバーは、発売後も強力な応援者になってくれます。サプリメーカーでも、新フレーバーの投票や容器デザインの意見募集など、小さな共創から始めることができます。

事例2:ベースフード「BASE FOOD Labo」|定期購入者限定で継続を支える

完全栄養食「BASE FOOD」を販売するベースフード株式会社は、継続コース会員だけが参加できるオンラインコミュニティ「BASE FOOD Labo」を運営しています。同社のBASE FOOD Laboアプリリリースのお知らせによると、コミュニティは2018年に始まり、2022年3月時点で約1.8万人のユーザーが「研究員」として参加していました。

コミュニティでは、会社から商品改善のポイントを伝える「カイゼン報告」、管理栄養士からの食事アドバイス、ユーザー同士のアレンジレシピ共有や新商品のアイデア投稿などが行われています。アプリ化の際には、投稿やアンケート回答でポイントがたまり研究員ランクが上がる仕組みや、みんなで食べて理想のからだを目指すプログラム「BASE FOOD CAMP」も導入されました。

参考にしたいのは、参加条件を定期購入者に絞っている点です。「続けている人だけの特別な場所」であることが継続の動機になり、仲間と一緒に取り組むプログラムが途中でやめてしまうことを防ぎます。改善の結果をきちんと報告して「声が届いている」と実感してもらう設計も、定期購入型の健康食品ブランドにそのまま応用できます。

事例3:カゴメ「&KAGOME」|10年以上続く参加型のファンサイト

野菜飲料などを展開するカゴメ株式会社は、2015年4月15日にファンコミュニティサイト「&KAGOME」を開設しました。同社の&KAGOME開設のニュースリリースでは、「みんなとカゴメでつくるコミュニティ」をテーマに、掲示板やレシピ共有、投票、社員が直接情報を届ける「カゴメ便り」、ファン限定イベントの案内といったコンテンツが紹介されています。

2026年9月時点でも、&KAGOMEのサイトでは商品レビュー、家庭菜園や料理の写真投稿、テーマ別の投票、トークルームなどが日々更新されています。投票のような気軽に参加できる企画と、社員の顔が見える発信を組み合わせ、長く続けている点が特徴です。また、宣伝・広告目的の投稿や個人情報の掲載を利用者が報告できる仕組みも用意されています。

健康食品ブランドにとっての学びは、「毎日の食卓」という身近な話題を軸にすることで、商品の話ばかりにならずに交流が続いていることです。サプリなら、睡眠や運動、食事など、商品の周辺にある生活テーマを話題の軸にすると参加のハードルが下がります。

事例4:無印良品「IDEA PARK」|声をどう扱ったかを公開する仕組み

最後は健康食品に限らない事例ですが、共創の仕組みとして参考になるのが無印良品の「IDEA PARK」です。利用者が「こんな商品がほしい」「ここを改善してほしい」といったリクエストを投稿し、ほかの利用者が「良いね」やコメントで反応できます。投稿は「新着リクエスト」「ストック済み」「販売中」「見直し中」「できました」といったステータスで整理され、2026年9月末時点で8万件を超えるリクエストが寄せられています。ヘルス&ビューティーや食品のカテゴリもあります。

ポイントは、集めた声が「その後どうなったか」を見える形にしていることです。意見を募るだけで反応がなければ、ファンは次第に声を上げなくなります。サプリのコミュニティでも、寄せられた要望に対して「検討中」「今回は見送り、その理由」「改善しました」と結果を返すだけで、参加する意味が大きく変わります。

【ステップ1〜3】ファンコミュニティの戦略設計と立ち上げ

ここから具体的な実践ステップに入ります。どんなに素敵な家も、土台がなければ崩れてしまいます。ファンコミュニティも同じで、最初の設計が成否を大きく左右します。目的を明確にする「Why」、ターゲットを深く知る「Who」、集まる場所を決める「Where」の3つから始めましょう。

Step 1:なぜつくるのか。コミュニティの「目的(Why)」を定義する

最初に、「何のためにファンコミュニティをつくるのか」を具体的に定義します。この目的がすべての活動のコンパスになります。「ファンを増やしたい」という漠然とした目標ではなく、測定できるレベルまで解像度を上げるのが理想です。たとえばサプリブランドなら、次のような設定が考えられます。

  • 定期購入の3か月継続率を改善する(例:コミュニティ参加者の継続率を非参加者より高める)
  • 新フレーバーや新容量の開発で、発売前にファンの評価を得て失敗を減らす
  • 「飲み方」「飲み忘れ」に関する問い合わせをコミュニティ内の情報共有で減らす

目的がはっきりすれば、どんなコンテンツや企画が必要かも自然と見えてきます。

Step 2:誰と一緒につくるのか。「ペルソナ(Who)」を描く

次に、「誰のためのコミュニティなのか」というペルソナを設定します。年齢や性別などのデモグラフィック情報だけでなく、どんな目的でサプリを摂っているのか(運動のパフォーマンス、美容、家族の栄養管理、仕事中のコンディションなど)、何に価値を感じ、どこでつまずいているのかまで掘り下げます。既存顧客のデータ分析やアンケート、インタビューが有効です。顧客インサイトの掘り下げ方も参考になります。

サプリならではの注意点として、病歴などの健康に関する情報は、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に当たるため、取得には原則として本人の同意が必要です。ペルソナづくりのためのアンケートでも、必要以上に健康状態を尋ねない設計を心がけましょう。

Step 3:どこでつくるのか。「プラットフォーム(Where)」を選ぶ

目的とペルソナが決まったら、コミュニティの「場所」を選びます。予算や運営体制、そして顧客データをどこまで活用したいかによって最適な選択肢は変わります。

タイプ主な例メリットデメリット向いているケース
SNS・チャット型LINEオープンチャット、Facebookグループ、Discordなど無料で始めやすく、利用者も使い慣れている過去ログを追いにくい。仕様変更の影響を受ける。購買データと結びつけにくいまずは小さく試したい。少人数のコアファンから始めたい
専用プラットフォーム型コミュニティ構築用のSaaSイベント管理やアンケート、分析機能が充実。独自の世界観をつくれる初期費用・月額費用がかかる。新規登録の手間が生じる本格的に運営し、参加状況と継続率の関係を分析したい
EC会員機能との連携型定期購入のマイページと同じIDでログインできるコミュニティ購入者限定にしやすく、購買データと参加データをつなげられるシステム連携の設計が必要定期通販が主力で、継続率改善を最重要目標にしたい
自社開発型独自に構築したサイト・アプリ設計の自由度が最も高く、ブランド体験を最大化できる開発・保守コストが高く、専門人材が必要十分な予算と開発体制があり、唯一無二の体験をつくりたい

ベースフードのように定期購入のアカウントでそのまま参加できる設計にすると、参加の手間が減るうえ、「参加者は継続しやすいのか」を数字で検証しやすくなります。

【ステップ4〜5】ファンを惹きつけ、育てるコンテンツと企画

場の準備ができたら、次は中身です。企業からの一方的な発信だけでは、ファンはすぐに飽きてしまいます。大切なのは、「参加したい」「応援したい」と思える双方向の仕掛けをつくることです。

Step 4:何を話すのか。「コンテンツ戦略(What)」を練る

コンテンツはコミュニティの生命線です。ペルソナが興味を持ち、目的にも沿ったコンテンツを継続的に届ける計画を立てましょう。ポイントは「ここでしか得られない限定感」と「参加を促す仕掛け」です。最初は運営側が主導し、徐々にファンからの発信(UGC)が増えていく状態を目指します。

  • 限定情報系:原料の調達や品質管理の裏側、開発中の新フレーバーの先行案内、開発者インタビュー、失敗談を含む開発秘話など
  • お役立ち系:管理栄養士によるQ&A、飲み忘れを防ぐ習慣づくりのコツ、成分の基礎知識講座、食事・睡眠・運動に関する勉強会など
  • 交流促進系:自己紹介スレッド、「今日の朝ごはん」のような雑談トピック、目的別(運動・美容・家族の健康など)の話題部屋など
  • 参加・共創系:新フレーバーの投票、パッケージや容量への意見募集、商品改善の要望投稿と結果報告など

なお、どのコンテンツでも、運営側が特定の効果効能を断定するような発信は避け、成分の一般的な情報と自社商品の表示できる範囲を区別して伝えることが大切です。

Step 5:どう巻き込むのか。「エンゲージメント企画(How)」を実践する

よいコンテンツも、置いておくだけではもったいないものです。オンライン・オフラインを問わず、「楽しい」「また参加したい」と思える体験を設計しましょう。たとえば、月1回のオンライン交流会、目的別のテーマ座談会、新商品の試飲・試食会、工場や研究所の見学会、仲間と一緒に1か月取り組むチャレンジ企画などが考えられます。

大切なのは、企画を通じてファン同士の横のつながりを生むことです。運営とメンバーの縦の関係だけでなく、メンバー同士がつながることで、コミュニティへの所属意識は格段に高まります。ベースフードの「BASE FOOD CAMP」のように、仲間と一緒に取り組む仕組みは健康習慣の継続と特に相性がよい企画です。

ファンが生み出すコンテンツ(UGC)を育てる秘訣

コミュニティが成熟すると、ファン自身がすばらしいコンテンツを生み出してくれるようになります。アレンジレシピ、続けるための工夫、写真やイラストなど、UGCは企業の発信よりも身近で信頼されやすく、クチコミが広がる仕組みの起点にもなります。UGCを増やすには、「称賛」と「活用」の文化が欠かせません。すてきな投稿を定期的に紹介・表彰し、「自分の投稿が認められた」と感じてもらえる仕組みをつくりましょう。

ただし健康サプリの場合、UGCを広告や販促に転用するときは次の章で説明する法規制に注意が必要です。コミュニティ内で称賛することと、広告に使うことは分けて考えてください。

サプリのファンコミュニティで必ず押さえたい法規制とリスク管理

健康サプリ・健康食品のコミュニティ運営では、ほかの業界以上に法規制への配慮が求められます。知らずに運営すると、せっかく育てたファンとの信頼を一度に失いかねません。最低限押さえておきたい3つのポイントを整理します。

ステルスマーケティング規制:会員に投稿を依頼するときの注意

2023年10月1日から、広告であることを隠す、いわゆるステルスマーケティングは景品表示法違反となりました。消費者庁のステルスマーケティング規制の解説ページでは、企業がインフルエンサーなどの第三者に依頼・指示する投稿も広告に含まれ、SNS投稿やレビュー投稿も対象になると説明されています。規制の対象は広告主である事業者です。

コミュニティ運営で注意したいのは、会員に商品を無償提供してSNSへの投稿を依頼する、投稿内容を指定するといったケースです。事業者が投稿内容の決定に関与したと認められれば、広告であることを明示する必要があります。一方、会員が自発的に書いた感想は規制の対象外です。アンバサダー施策などを行う場合は、依頼の有無と表記ルールを事前に決めておきましょう。

体験談の扱い:健康増進法・景品表示法の留意事項

消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項」では、体験談を引用・掲載することで健康保持増進効果を示す表示も、規制の対象となり得る表示の形として整理されています。コミュニティに寄せられた「これを飲んで体調がよくなった」という声を、そのまま広告やLPに転載すると、誇大表示と判断されるおそれがあります。

コミュニティ内のガイドラインでも、病気が治った・予防できたといった医薬品的な効果をうたう投稿への対応方針を決めておくと安心です。運営側が同調したり拡散したりすると、企業による表示とみなされる可能性があるため、慎重な扱いが必要です。

健康被害の声を見逃さない:コミュニティは早期発見の窓口にもなる

先に触れたとおり、機能性表示食品の届出者には、医師の診断による健康被害情報を収集し、発生・拡大のおそれがある場合は速やかに行政へ提供することが義務づけられています。また消費者庁の資料では、医師以外から健康被害の情報を得た場合、届出者の責任で医師の診察を勧めるなど適切に対応することも求められています(制度の概要は消費者庁の機能性表示食品のページで確認できます)。

コミュニティには、体調の変化に関する投稿が寄せられることがあります。こうした投稿を見つけたら、モデレーターが個別に連絡してお客様相談窓口へつなぎ、必要に応じて受診を勧める。そのための連絡フローを、品質保証部門やお客様相談室とあらかじめ決めておくことが大切です。誠実に対応する姿勢そのものが、ファンの信頼を強めます。

【ステップ6〜7】コミュニティの効果測定と運用体制づくり

ファンコミュニティは、愛情をかけて育てる庭のようなものです。つくって終わりではなく、ここからが本当のスタートです。目的が達成できているかを定期的に確かめ、改善を繰り返しましょう。

Step 6:どう測るのか。「効果測定(KPI)」の考え方

「盛り上がっている」という感覚だけでは、社内に価値を説明することも、改善の方向を決めることもできません。Step 1で定めた目的に立ち返り、それを測る指標を決めましょう。

  1. 活性度(Health)指標:月間アクティブユーザー数、投稿数、コメント数、ログイン頻度など、コミュニティの健康状態を示す指標です。
  2. 満足度(Satisfaction)指標:NPS®(ネット・プロモーター・スコア)、イベント参加者の満足度、退会率など、ファンの満足度を示す指標です。
  3. 事業貢献(Business)指標:参加者と非参加者の定期継続率・解約率の差、参加者のLTV、UGCの数、商品改善に反映された要望の件数など、事業へのインパクトを示す指標です。

サプリブランドでは、特に「参加者と非参加者の継続率の差」が説得力のある指標になります。データを定期的に観測し、何がうまくいき、何が課題なのかを分析することが次の一手につながります。

Step 7:どう続けるのか。「運用体制(モデレーション)」を整える

コミュニティを長く安全に運営するには、しっかりとした運用体制、特にモデレーションの仕組みが欠かせません。コミュニティマネージャーを中心に、誰が・いつ・何をするかを明確にしましょう。主な役割は、投稿への反応、新規参加者へのウェルカムメッセージ、企画の立案と実行、そしてネガティブな投稿やトラブルへの対応です。

サプリのコミュニティでは、一般的なガイドラインに加えて、次のようなルールを定めておくと安心です。

  • 病気の治療・予防をうたう投稿や、医薬品との併用を勧める投稿への対応方針
  • 体調の変化に関する投稿を見つけた際の、お客様相談窓口への連絡フロー
  • 他社商品の誹謗中傷や、無関係な商品の宣伝投稿の扱い
  • 運営スタッフが投稿する際の立場の明示(社員であることを示す)

カゴメの「&KAGOME」のように、利用者が不適切な投稿を報告できる機能を設けるのも有効です。一人ですべてを抱え込まず、熱心なファンにアンバサダーとして新規参加者のサポートを担ってもらうのもよい方法です。その場合も、ステルスマーケティング規制を踏まえた役割と表記のルールを決めておきましょう。

まとめ:競争の激しい市場ほど、ファンとの関係が最大の差別化になる

今回は、健康サプリ・健康食品ブランドがファンコミュニティを育て、事業を伸ばすための実践法を7つのステップで解説しました。「3つの原則」で考え方を整え、「Why→Who→Where」で設計図を描き、「What→How」でファンを惹きつけ、「KPI→運用体制」で育てていく。この流れに、サプリならではの法規制とリスク管理を組み込むことが大切です。

成分や価格では似た商品が並ぶ市場でも、「このブランドの人たちとなら続けられる」という関係は簡単にはまねできません。ファンコミュニティは一朝一夕に完成するものではありませんが、着実に育てれば、競合がまねできない強力なブランド資産になります。まずは今日の小さな一歩として、定期購入を長く続けてくれている顧客を5人リストアップしてみてはいかがでしょうか。その方々が、あなたの最初のコミュニティメンバーになるかもしれません。

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よくある質問(FAQ)

Q. ファンコミュニティを始めるには、どれくらいの予算や人員が必要ですか?

A. 小さく始めることができます。LINEオープンチャットやFacebookグループなど無料のサービスを使い、担当者1名が業務の一部の時間を充てて始める方法もあります。専用プラットフォームを導入する場合は初期費用や月額費用がかかり、機能や規模によって金額は大きく変わるため、複数のサービスを比較して検討しましょう。最初から完璧を目指さず、目的と規模に合った無理のない範囲で始めることが大切です。

Q. 小さなサプリブランドでもファンコミュニティはつくれますか?

A. はい、つくれます。むしろ顧客との距離が近い中小ブランドのほうが、熱量の高いコミュニティを築きやすい面もあります。大切なのは企業規模ではなく、ファンと誠実に向き合う姿勢と、価値ある体験を届け続ける姿勢です。まずは定期購入を長く続けている方との対話から始めるのがおすすめです。

Q. 初期メンバーはどうやって集めればよいですか?

A. 最も確実なのは、既存顧客のなかでも特にロイヤルティの高い方(継続期間が長い、好意的なレビューを書いてくれたなど)に個別に声をかける方法です。同梱物やメールマガジンで「創設メンバー募集」と特別感を出して案内するのも有効です。最初のメンバーは量より質を重視しましょう。

Q. ファンの熱量を保ち続けるコツはありますか?

A. 3つあります。1つ目は、新しい情報や企画を定期的に届けてマンネリを防ぐこと。2つ目は、よい投稿や貢献を積極的に称賛し、光を当てる文化をつくること。3つ目は、メンバー同士のつながりを促すことです。寄せられた要望への回答や改善結果をきちんと報告することも、「声が届いている」という実感につながり、熱量の維持に役立ちます。

Q. コミュニティに寄せられた会員の体験談を広告に使ってもよいですか?

A. 慎重な判断が必要です。消費者庁の留意事項では、体験談の引用・掲載によって健康保持増進効果を示すことも、景品表示法や健康増進法上の問題となり得る表示の形とされています。また、会員に依頼して書いてもらった投稿を使う場合は、広告であることの明示も求められます。広告に転用する際は、表示できる範囲を確認し、必要に応じて専門家に相談してから判断しましょう。