広告やキャンペーンだけで顧客との接点をつくるのではなく、商品やサービスを利用する人同士が情報を交換し、企業もその輪の中に入って対話を続ける。こうした顧客参加型のマーケティングを取り入れる企業が増えています。
期待できるのは、単なる「ファンづくり」だけではありません。継続利用や顧客理解、口コミ、商品改善など、事業の複数の領域へ効果が波及する可能性があります。
ただし、「参加者を集めれば売上が上がる」と単純に考えるのは適切ではありません。重要なのは、顧客同士の交流や企業との対話が、どのような行動変化につながるのかを整理することです。
この記事では、顧客との継続的な関係づくりから期待できる9つの効果を、LEGO、Salesforce、Atlassian、Shopifyの公式事例も交えながら解説します。全体的な考え方から確認したい場合は、顧客参加型マーケティングの仕組みや進め方をまとめた記事も参考にしてください。
- 1 顧客参加型マーケティングで期待できる9つの効果
- 2 1.継続利用が増え、LTV向上につながる可能性がある
- 3 2.利用方法を学べる環境が離脱防止につながる
- 4 3.ブランドへの理解が深まり、ロイヤルティを育てやすい
- 5 4.利用者自身の言葉による口コミが生まれやすくなる
- 6 5.UGCや活用事例が継続的に蓄積される
- 7 6.広告だけに依存しない新規顧客との接点をつくれる
- 8 7.会話の中から顧客インサイトを発見できる
- 9 8.顧客を商品開発に参加させる「共創」ができる
- 10 9.ユーザー同士の知識共有がサポートと活用促進を補完する
- 11 企業事例から分かるのは「参加する理由」の設計が必要ということ
- 12 効果を出すには「人数」より「行動の変化」を見る
- 13 成果につながりやすいコンテンツは「企業の話」だけではない
- 14 まとめ|顧客との関係を事業成果につなげる
- 15 よくある質問
- 16 ファンとの関係づくりに役立つコンテンツを制作します
顧客参加型マーケティングで期待できる9つの効果
効果は大きく「顧客との取引を長くする」「第三者への広がりをつくる」「商品やサービスを改善する」という3つの方向から考えると整理しやすくなります。
| 領域 | 期待できる効果 | 主な変化 |
|---|---|---|
| 継続利用 | LTVの向上 | 購入頻度や継続期間、利用範囲の拡大 |
| 解約・離脱の抑制 | 利用方法の理解や顧客同士の支援 | |
| ロイヤルティの向上 | ブランドへの理解、共感、参加意識の醸成 | |
| 情報の広がり | 口コミ・紹介の増加 | 利用者自身の言葉による推奨 |
| UGCの蓄積 | レビュー、活用例、投稿、事例などの増加 | |
| 新規顧客獲得の補完 | 広告以外の接点や流入経路の形成 | |
| 事業改善 | 顧客インサイトの収集 | 利用実態や課題、ニーズの把握 |
| 顧客との共創 | アイデアや改善案を商品開発へ反映 | |
| 学習・サポートの充実 | 利用者同士の知識共有と活用促進 |
1.継続利用が増え、LTV向上につながる可能性がある
一度購入して終わる顧客よりも、長く商品やサービスを利用する顧客が増えれば、結果としてLTV(顧客生涯価値)の向上が期待できます。
そのために重要なのが、商品を購入した後にも接点を持ち続けることです。利用者の活用例を紹介する、質問に答える、新しい使い方を共有する、イベントを開催するといった接点があれば、商品との関係は購入時だけで終わりません。
特にサブスクリプションや定期通販、SaaSなどでは、利用期間そのものが事業成果に影響します。LTVを考える際は、単価だけではなく、継続率、利用頻度、アップセル、クロスセルなどを合わせて確認するとよいでしょう。LTVの考え方については、顧客接点からLTVを高める方法でも詳しく解説しています。
2.利用方法を学べる環境が離脱防止につながる
優れた商品でも、使い方が分からなければ十分な価値を感じてもらえません。特に機能が多いサービスでは、「契約したものの使いこなせない」という状態が解約の一因になることがあります。
利用者同士が質問したり、実際の使い方を共有したりできれば、企業のマニュアルだけでは伝えきれない知識を補えます。
たとえばSalesforceの「Trailblazer Community」では、利用者がグループに参加し、質問への回答、ベストプラクティスの共有、学習などを行える仕組みがあります。Salesforceの公式学習コンテンツでは、参加者への調査として、回答者の80%が「他の利用者とのつながりが導入促進や生産性向上に役立った」と回答した結果も紹介されています。
Salesforce Trailheadによる利用者ネットワークの解説
この事例から参考にしたいのは、「交流そのもの」を目的にしない点です。質問への回答、活用ノウハウ、学習など、商品を使い続ける理由につながる情報を蓄積することが重要です。
3.ブランドへの理解が深まり、ロイヤルティを育てやすい
継続的な関係をつくる目的は、購入回数を増やすことだけではありません。企業の考え方や商品づくりの背景を知ってもらう機会にもなります。
価格や機能だけで比較される状態では、競合商品が値下げしたり、新機能を追加したりすると顧客が移る可能性があります。一方、「この企業の姿勢に共感している」「この商品を使う人たちの考え方が好き」といった理由が加われば、関係は取引だけではなくなります。
ただし、ロイヤルティは企業が「高める」と宣言して生まれるものではありません。利用者に役立つ情報を届ける、声を聞く、意見を施策へ反映するといった積み重ねが必要です。顧客との関係を長期的に考える場合は、顧客ロイヤルティを高める考え方も確認しておくとよいでしょう。
4.利用者自身の言葉による口コミが生まれやすくなる
企業が商品の魅力を説明する広告と、実際の利用者が体験を語る口コミでは、情報の受け取られ方が異なります。
顧客との接点を継続していると、「どのように使っているか」「どこが便利だったか」「どのような課題を解決できたか」といった体験談が蓄積されます。そこからSNS投稿、レビュー、知人への紹介などが広がる可能性があります。
重要なのは、企業が一方的に「投稿してください」と求めることではありません。紹介したくなる体験や、他の人に教えたくなる情報をつくることが先です。
口コミの特徴やマーケティングでの扱い方については、口コミを生かした情報拡散の考え方でも紹介しています。
5.UGCや活用事例が継続的に蓄積される
利用者が投稿する写真、レビュー、使用方法、事例記事、動画などのUGC(User Generated Content)は、商品を検討している人にとって具体的な判断材料になります。
企業から見ても、「誰が」「どんな場面で」「何のために」商品を使っているのかが分かるため、広告やWebサイトの訴求を改善する材料になります。
UGCはSNS投稿だけとは限りません。利用者インタビュー、導入事例、イベントレポート、Q&A、活用ノウハウなど、企業が取材・編集して届けるコンテンツも、顧客の声を広げる重要な手段です。
自社で情報発信を設計する場合は、継続的なコンテンツ発信の基本も合わせて考えると、投稿を単発で終わらせにくくなります。
6.広告だけに依存しない新規顧客との接点をつくれる
口コミやUGCが増えると、検索、SNS、知人からの紹介など、企業広告とは異なる経路で商品を知る人が増える可能性があります。
その結果としてCPA(顧客獲得単価)が改善するケースも考えられますが、顧客参加型の施策を実施すれば自動的にCPAが下がるわけではありません。
運営費、人件費、イベント費、コンテンツ制作費なども発生します。したがって「広告費が不要になる施策」ではなく、広告以外の顧客接点を育て、獲得経路を分散する施策と捉える方が実態に近いでしょう。
7.会話の中から顧客インサイトを発見できる
アンケートでは、企業が設定した質問に対する回答しか得られません。一方、利用者同士の会話や自由な投稿には、企業側が想定していなかった使い方や悩みが表れることがあります。
たとえば、次のような情報です。
- 購入前に迷っていたポイント
- 利用開始直後につまずいた操作
- 企業が想定していなかった利用場面
- 他社商品と比較されるポイント
- 継続利用している理由
- 改善してほしい機能
こうした発言をそのまま施策へ反映するのではなく、必要に応じて個別インタビューで背景を掘り下げると、表面的な要望ではなく「なぜそう感じたのか」まで理解できます。
顧客の本音を深掘りする方法については、顧客インタビューの設計と聞き方も参考になります。
8.顧客を商品開発に参加させる「共創」ができる
顧客の声を集めるだけでなく、新商品のアイデアや改善案を一緒につくる方法もあります。
代表的な企業事例がLEGOの「LEGO Ideas」です。ファンが新しい製品案を投稿し、一定の支持を集めた案はLEGOによる審査へ進みます。現在の公式ルールでは、製品アイデアが10,000人の支持を獲得するとレビュー対象となり、選ばれたものは公式商品として製品化される可能性があります。
企業がすべての企画を内部だけで考えるのではなく、利用者の発想や支持を商品開発のプロセスへ組み込んでいる点が特徴です。
もちろん、すべての企業が商品化まで行う必要はありません。新商品の試作品を見せる、機能候補に意見を求める、名称案を募集するなど、小さな参加機会から始めることもできます。
9.ユーザー同士の知識共有がサポートと活用促進を補完する
利用者が増えるほど、企業だけですべての質問に対応するのは難しくなります。一方、長く商品を利用している顧客の中には、企業担当者とは異なる視点で初心者へ説明できる人もいます。
Atlassianは、JiraやConfluenceなどの利用者が質問や事例、ノウハウを共有できる場を運営しています。公式ページでは、質問、資料へのアクセス、イベント、利用者同士の知識共有に加え、製品チームへのフィードバック機会も用意されています。
Shopifyも、販売事業者やパートナーが技術的な質問をしたり、ビジネスについて意見交換したりできるフォーラムを公式の支援手段の一つとして案内しています。
Shopify公式ヘルプセンターの利用者向け交流・支援ページ
ここで重要なのは、企業のサポート窓口を利用者へ丸投げすることではありません。企業が正式な情報を提供しながら、実際の活用経験を持つ利用者の知識も共有できる状態をつくることに価値があります。
企業事例から分かるのは「参加する理由」の設計が必要ということ
LEGO、Salesforce、Atlassian、Shopifyでは扱う商品も顧客層も異なります。しかし、共通しているのは「人を集めること」自体を目的にしていない点です。
- LEGO:自分のアイデアが商品になる可能性がある
- Salesforce:製品を学び、疑問を解決し、他の利用者から知識を得られる
- Atlassian:使い方や事例を共有し、他の利用者や企業とつながれる
- Shopify:店舗運営や技術的な課題について情報交換できる
つまり、継続的な顧客参加を促すためには、「参加してください」と呼びかける前に、参加者にとってどんな価値があるのかを決める必要があります。
効果を出すには「人数」より「行動の変化」を見る
参加者数が増えても、閲覧するだけの人ばかりであれば、事業成果へつながっているとは判断できません。
最初に「何を変えたいのか」を設定し、その目的に合わせて指標を選びます。
| 目的 | 確認したい指標の例 |
|---|---|
| LTV向上 | 継続期間、購入頻度、平均購入額、アップセル率 |
| 離脱防止 | 継続率、解約率、利用頻度、機能利用率 |
| 口コミ促進 | 紹介件数、UGC数、指名検索、紹介経由の問い合わせ |
| 顧客理解 | インタビュー数、改善提案数、発見した課題数 |
| 商品改善 | 提案数、採用数、テスト参加数、改善後の利用状況 |
「参加者が1万人いる」といった規模だけを見るのではなく、参加した人の購買や継続率、利用状況にどのような違いがあるかを比較することが大切です。
成果につながりやすいコンテンツは「企業の話」だけではない
顧客との関係を維持するには、定期的な情報発信が欠かせません。ただし、毎回新商品の案内や企業からのお知らせばかりでは、次第に読まれなくなります。
継続的に届けやすいのは、参加者自身が登場するコンテンツです。
- 利用者インタビュー
- ユーザー紹介
- 導入・活用事例
- 商品を使いこなすためのノウハウ
- イベント参加者の声
- 開発者・担当者へのインタビュー
- 利用者から寄せられた質問への回答
企業が言いたいことだけではなく、「他の人がどのように使っているのか」「自分と似た人は何を感じているのか」が見える記事を増やすことで、読む理由が生まれます。
まとめ|顧客との関係を事業成果につなげる
顧客参加型マーケティングの価値は、単に企業と顧客が交流できることではありません。
LTV、継続率、口コミ、UGC、顧客理解、商品改善、利用促進など、企業が抱える複数の課題を顧客との継続的な関係を通じて改善していく仕組みにあります。
一方で、すべての効果を一度に求めると施策の目的が曖昧になります。まずは「解約を減らしたい」「顧客の声を商品開発へ生かしたい」「活用事例を増やしたい」など、一つの目的を明確にすることから始めるとよいでしょう。
その上で、参加者同士の交流、インタビュー、事例記事、イベント、ノウハウ発信など、目的に合った接点を設計します。
よくある質問
Q1.効果が出るまでどのくらいかかりますか?
一律の期間はありません。質問数やインタビューで得られる顧客の声などは比較的早く確認できますが、LTVや解約率、ブランドへの評価は一定期間のデータが必要です。「半年で効果が出る」といった期間を先に決めるより、短期指標と中長期指標を分けて確認することをおすすめします。
Q2.小さな会社でも取り組めますか?
可能です。専用サイトを新設しなくても、既存顧客へのインタビュー、オンラインイベント、メールマガジン、SNS、ユーザー事例などから始められます。むしろ顧客数が少ない段階ほど、一人ひとりの声を聞きやすいという利点があります。
Q3.BtoBとBtoCでは効果が違いますか?
基本的な考え方は共通しますが、重視する成果は異なります。BtoBでは活用促進、顧客同士の情報交換、事例共有、継続利用などが重要になりやすく、BtoCでは口コミ、UGC、ブランドへの愛着、商品開発への参加などを設計しやすい傾向があります。
Q4.ROIはどのように測ればよいですか?
まず目的を決め、その目的に関連する指標を設定します。たとえば継続利用が目的なら解約率やLTV、口コミが目的なら紹介経由の問い合わせや購入、顧客理解が目的ならインタビューから得た改善提案の採用数などを追います。運営費やコンテンツ制作費も含めて比較することが重要です。
Q5.どのような記事を発信すれば参加が続きますか?
企業からのお知らせだけでなく、利用者の体験や活用方法を中心にすると継続的なテーマをつくりやすくなります。ユーザーインタビュー、参加者紹介、導入事例、活用ノウハウ、イベントレポートなどは、企業と顧客の双方にとって情報価値を持たせやすいコンテンツです。
ファンとの関係づくりに役立つコンテンツを制作します
ファンとの関係を活性化させるには、メンバーが読みたくなる記事や、参加者の声を伝えるコンテンツを継続して届けることが欠かせません。
株式会社アワードは、ユーザーインタビューやメンバー紹介記事、活用事例の取材・執筆、Webコンテンツの企画・ディレクションまで、ファンとの関係づくりに役立つコンテンツ制作をお手伝いしています。
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