「理系採用を強化するために、現場の優秀なエンジニアにインタビューしたものの、上がってきた原稿が専門用語だらけでさっぱり分からない……」
BtoB企業や大手メーカーの採用担当者の方から、このようなご相談を非常によくいただきます。最先端の技術や自社の強みを伝えたいのに、内容が難解すぎて、これでは求職者である学生に魅力が伝わらないと頭を抱えてしまうケースは少なくありません。
技術者の語るストーリーは、企業の競争力の源泉そのものです。しかし、それをそのまま発信しても学生の心には響きません。人事担当者に求められるのは、技術者の熱い想いや技術の凄さを、学生が自分ごと化できる言葉へ「翻訳」することです。
この記事では、専門職・メーカーならではのインタビューが難解になってしまう構造的な原因を解き明かし、人事が明日からの取材でそのまま使える「3つの質問」と、学生の心を動かす編集リライトの技術をプロの視点から具体的に解説します。
なぜ技術者インタビューは「難解で退屈な記事」になってしまうのか?
現場の技術者は、日々熱意を持って開発に取り組んでいます。それなのに、なぜインタビュー記事になると途端に難解で退屈なものになってしまうのでしょうか。そこには、堅い業界や技術職ならではの2つの構造的な原因があります。
1. 「知識の呪縛」による前提条件の省略
技術者にとって、業界の専門用語や社内の開発環境、基本的な物理・化学の法則は「言わずもがなの当たり前」です。そのため、高度な専門知識を持たない文系の人事や、まだ実務経験のない学生が読むという視点が抜け落ちてしまい、前提の解説がすっぽりと抜けた「置いてけぼりの記事」が完成してしまいます。
2. 「人間」ではなく「スペック(機能)」を語ってしまう習性
技術者は、自分の仕事の成果を正確に伝えようとするあまり、製品の仕様、数値、アルゴリズムの優位性といった「スペック」ばかりを語りがちです。しかし、採用広報で学生が本当に知りたいのは、スペックそのものではなく、「どんな壁にぶつかり、それをどう乗り越えたのか」という人間ドラマや、その技術が社会に与える影響です。事実の羅列になってしまうことこそが、最大の原因なのです。
技術者の言葉を「求職者向けに翻訳」する3つの質問
技術者の口から「スペックの解説」ではなく「感情の乗ったストーリー」を引き出すためには、インタビュー時の問い立てがすべてです。人事が取材時に投げかけるべき、効果絶大な3つの質問を紹介します。
質問①:「もしこの技術が世界から消えたら、私たちの生活はどうなりますか?」
技術の難しさを解説してもらう必要はありません。その技術が持つ「社会的価値」を極端な仮定で質問します。これにより、技術者は専門用語を使わずに、その技術がどれほど重要な役割を果たしているかを、誰にでも分かる言葉で説明せざるを得なくなります。
質問②:「開発中、一番『もうダメだ、諦めよう』と思った瞬間と、それをどう乗り越えたかを教えてください」
順調な開発ストーリーほど退屈なものはありません。あえて「最大の挫折」に焦点を当てることで、技術者の人間味や、チームで課題を解決していくプロセス(社風)を引き出すことができます。理系学生は、スマートな成功体験よりも、泥臭い試行錯誤のプロセスに強く共感します。
質問③:「大学の研究室時代の自分に、今の仕事を説明するなら何と言いますか?」
ターゲットである「理系学生」に一番近い存在、それは過去の技術者本人です。この質問をすることで、技術者は自然と当時の自分を思い出し、学生が興味を持つポイント(研究との繋がり、入社後のギャップ、成長実感)に目線を合わせた言葉選びをしてくれるようになります。
プロの編集技術:伝わる記事へのリライトBefore/After
取材で良いエピソードが引き出せたら、次は「言葉の翻訳(編集)」です。専門用語をただ噛み砕くだけでなく、ストーリーとして魅力的に仕上げるリライトの例をご覧ください。
【Before】専門用語の羅列で、凄さが伝わらない例
「私が担当しているのは、次世代パワー半導体向けの〇〇成膜プロセスの開発です。従来のシリコンウェハに比べ、〇〇ガスを用いた結晶成長制御が極めて困難であり、膜厚の均一性をナノメートルオーダーで制御するために、シミュレーションと実験を繰り返しました。結果として欠陥密度を従来比50%低減することに成功しました」
【After】社会的意義とドラマにフォーカスしたリライト例
「電気自動車(EV)の航続距離を劇的に伸ばす。それが、私のミッションです。私たちが挑んだのは、次世代半導体の製造にかかせない『超・精密な膜』を張る技術の開発でした。ガスを吹き付けるわずか1秒のズレで膜が歪んでしまうため、実験室にこもる日々。何度も失敗のデータを前に頭を抱えましたが、チームで仮説を検証し続け、ついに世界トップレベルの美しさで膜を張ることに成功しました。私たちが流した汗の先には、世界のクリーンエネルギーの未来が繋がっています」
【解説】
Beforeでは技術的な数値や名称に終始していましたが、Afterでは「EVの航続距離を伸ばす」という壮大な目的(社会的意義)を冒頭に置き、開発者の試行錯誤という「ドラマ」を前面に出すことで、専門知識がなくてもワクワクする内容へと翻訳しています。
まとめ:理系学生の心を揺さぶる「採用ブランディング」のために
理系採用における技術者インタビューは、単なる仕事内容の紹介ではありません。企業の技術力へのプライドと、そこで働く人の魅力を伝える強力なブランディングツールです。
しかし、日常業務に追われる人事担当者の方が、通常業務の傍らで技術の本質を理解し、学生の心に刺さるストーリーへと毎回リライトするのは、時間的にも技術的にも非常に難易度が高いのが現実です。
「自社の技術者の魅力を、もっと圧倒的なクオリティで届けたい」「他社と差別化された採用オウンドメディアを作りたい」とお悩みの方は、プロの編集力を頼ることも一つの手です。
株式会社アワードでは、大手メーカーやBtoB企業の採用ブランディング、技術者インタビューの取材・執筆を数多く手掛けています。専門的な技術を「学生が憧れるストーリー」へと昇華させる編集力を、ぜひ実際の事例でご確認ください。まずは事例をご覧いただき、貴社の採用広報を次のステージへ進めるヒントを見つけてみませんか?