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コミュニティマーケティングに強い企業12選|国内外の成功事例に学ぶファンづくりの仕組み

「コミュニティマーケティングに取り組みたいけれど、実際にうまくいっている企業は何をしているのだろう」。そう感じている担当者の方は多いのではないでしょうか。広告だけで顧客の心をつかむのが難しくなった今、ファンとの長い関係を育てる仕組みづくりが、事業の成長を左右するようになっています。

この記事では、コミュニティマーケティングに強い国内外の企業12社の事例を、各社の公式サイトやニュースリリースで確認できる情報をもとに解説します。通信、スポーツ用品、アパレル、アウトドア、宿泊プラットフォーム、業務ソフトウェアなど、業種もBtoC・BtoBもさまざまです。12社を「助け合い型」「共創型」「会員体験型」「UGC共有型」「BtoB学習型」の5つに分けて紹介し、成功企業に共通するポイントと、自社で最初の一歩を踏み出すための手順までまとめました。

コミュニティマーケティングの定義や全体像から確認したい方は、先にコミュニティマーケティングの基礎と効果の解説に目を通しておくと、事例の意味がより立体的に見えてきます。

目次

なぜ今、企業はコミュニティに投資するのか

事例を見る前に、コミュニティマーケティングが注目される背景を整理しておきましょう。背景を押さえておくと、各社の取り組みが「何のための仕組みなのか」を読み取りやすくなります。

広告が届きにくい時代に「ファンの声」が効く

テレビCMやWeb広告で広く認知を取る手法は今も有効ですが、情報があふれる中で、広告だけで購買を後押しするのは難しくなっています。消費者が参考にするのは、自分と近い立場のユーザーによるレビューや、信頼できる知人のクチコミです。だからこそ企業は、自社の製品やサービスを本気で好きでいてくれるファンを育て、その声が自然に広がる場を持とうとしています。こうした考え方は、顧客が企業の代弁者になるアドボカシー・マーケティングや、クチコミを起点にしたマーケティングとも深くつながっています。

LTV(顧客生涯価値)を伸ばす「線」の関係をつくる

LTV(Life Time Value)は、一人の顧客が取引期間全体を通じて企業にもたらす利益のことです。コミュニティに参加している顧客は、製品への愛着や仲間とのつながりがあるため、継続利用やアップグレード、新商品の購入につながりやすくなります。コミュニティは、一度きりの購入で終わる「点」の関係を、長く続く「線」の関係へと育てる装置だといえます。

VOC(顧客の声)が製品開発の資源になる

アンケートやインタビューでは、どうしても「聞かれたこと」への回答にとどまりがちです。一方、コミュニティではメンバー同士が日常的に製品について語り合っており、改善要望から意外な使い方まで、企業にとって貴重な生の声が蓄積されていきます。後ほど紹介するワークマンやデカトロンのように、この声を製品開発のプロセスに正式に組み込んでいる企業もあります。

コミュニティマーケティングに強い企業12選の一覧

まずは今回紹介する12社の全体像を確認しましょう。コミュニティの「中心にある価値」によって5つのタイプに分けています。自社に近いタイプから読み進めていただくのもおすすめです。

タイプ企業(国)コミュニティ・施策領域
助け合い型giffgaff(イギリス)giffgaff community/PaybackBtoC・通信
Spotify(スウェーデン)Spotify Community/Spotify StarsBtoC・音楽配信
Airbnb(アメリカ)Community Center/Local Host Clubsホスト向け・宿泊
共創型ワークマン(日本)公式アンバサダー制度BtoC・アパレル
デカトロン(フランス)Decathlon Co-creationBtoC・スポーツ用品
会員体験型Rapha(イギリス)Rapha Cycling Club(RCC)BtoC・サイクルウェア
ハーレーダビッドソン(アメリカ)Harley Owners Group(H.O.G.)BtoC・二輪車
adidas(ドイツ)adidas RunnersBtoC・スポーツ
UGC共有型YAMAP(日本)登山アプリの活動日記BtoC・アウトドア
BtoB学習型SAP(ドイツ)SAP CommunityBtoB・業務ソフト
Atlassian(オーストラリア)Atlassian Community/ChampionsBtoB・業務ソフト
HubSpot(アメリカ)HubSpot CommunityBtoB・マーケティングツール

【助け合い型】ユーザー同士が課題を解決し合う企業事例

助け合い型は、詳しいユーザーがほかのユーザーの疑問に答えることで成り立つコミュニティです。サポート窓口の負荷を減らしながら、回答する側には「頼られる喜び」が生まれます。

1. giffgaff:会員同士の助け合いで成り立つ「あなたが運営する」通信会社

giffgaffは、O2の回線を利用してサービスを提供するイギリスの携帯通信会社です。最大の特徴は、カスタマーサポートの多くを会員コミュニティが担っている点にあります。giffgaff communityでは、「あなたが運営するモバイルネットワーク」を掲げ、会員が互いの質問に答えたり、サービス改善のアイデアを出し合ったりしています。役に立った回答には「Best Answer」のマークが付き、感謝を伝える「Kudos」を贈り合う文化も根付いています。

この仕組みを支えているのが、貢献に応じてポイントを付与するPayback(ペイバック)制度です。公式ページによると、フォーラムでの手助けや友人の紹介、改善アイデアの提案などでポイントがたまり、1ポイントは0.01ポンド換算。年2回(6月と12月)、現金・通信クレジット・チャリティへの寄付のいずれかで受け取れ、寄付を選ぶとgiffgaffが同額を上乗せします。

参考にできる点:詳しい会員の知識を「サポート資源」として活用し、貢献を金銭的な報酬と、称賛やバッジといった社会的な承認の両方で可視化しています。BtoCでも、課題解決を軸にしたコミュニティが成立することを示す好例です。

2. Spotify:熱心なユーザーを「Stars」として迎えるサポートコミュニティ

スウェーデン発の音楽配信サービスSpotifyは、公式のSpotify Communityを運営しています。アカウントや端末ごとのヘルプ掲示板のほか、音楽について語り合うチャット掲示板、機能要望を投稿・投票できる「Ideas」があり、実装済みのアイデアは「Implemented Ideas」として公開されています。

コミュニティを支えるのが、特に貢献度の高いユーザーを迎え入れる「Spotify Stars」プログラムです。公式FAQによると、Starsはユーザーの手助けや音楽の話題づくりに加え、スタッフと一緒にアイデアの管理も担います。応募の目安は3か月以上の継続的な活動で、有益な投稿を重ねているかどうかがコミュニティチームによって確認されます。

参考にできる点:「一般ユーザー → 熱心な回答者 → 公式に認められたStars」という成長の階段が用意されている点です。貢献するほど役割と権限が広がる設計は、上級メンバーの意欲を長く保つうえで有効です。

3. Airbnb:ホスト同士が学び合う公式フォーラムと地域クラブ

Airbnbは、ホスト向けの公式フォーラムAirbnb Community Centerを運営しています。リスティング(掲載情報)の相談、部屋づくりのアドバイス、予約対応、事業としての運営など、テーマ別の掲示板でホスト同士が経験を共有しています。英語のほか、フランス語、ドイツ語、スペイン語など複数言語で展開されています。

オンラインのフォーラムに加えて、地域ごとのホスト同士がつながる「Local Host Clubs」も用意されており、オンラインやミートアップで交流できます。また、フォーラム上には「Host Advisory Board」のメンバーやコミュニティマネージャーも参加しており、ホストの声を運営につなぐ役割を果たしています。

参考にできる点:顧客(ゲスト)ではなく、サービスの担い手であるホストを支えるコミュニティである点です。パートナーや販売店、加盟店など「一緒に価値を届ける人たち」向けのコミュニティづくりを考える企業にとって参考になります。

【共創型】顧客と一緒に製品をつくる企業事例

共創型は、ファンの知見やアイデアを製品開発に取り入れるコミュニティです。自分の声が形になる体験は、ブランドへの愛着を大きく高めます。

4. ワークマン:アンバサダーの提案を「丸呑み」してヒット製品を生む

作業服チェーンとして知られるワークマンは、熱心なファンを公式アンバサダーとして迎え、製品開発に参画してもらう仕組みで一般客向け市場を切り拓いてきました。2023年5月のワークマン公式ニュースリリースによると、きっかけはキャンプブロガーの「サリーさん」が、溶接工用の「綿かぶりヤッケ」を焚火向けウェアとしてブログで紹介し、即完売したことでした。

同社はサリーさんにアンバサダー第1号を依頼し、その意見をもとに女性も着やすい「コットンキャンパー」を開発。年間3,000着ほどだった特殊用途品が、40万着を超えるメジャー製品になったと紹介されています。同リリース時点でアンバサダーは約50人に増え、アンバサダーと開発した製品は全PB品の3分の1を占めるまでになりました。社是も「声のする方に、進化する」に改めています。

参考にできる点:社内に知見の少ない分野では、その分野で発信力を持つファンを「開発パートナー」として迎えることが近道になります。なお、同社の公式サイトでは、アンバサダーが制作した動画に提供商品が含まれる場合がある旨を明記しています。ファンに発信を依頼する際は、広告であることを分かるようにする配慮も欠かせません。

5. デカトロン:11万人超の「共創者」と製品をつくるCo-creation

フランスのスポーツ用品チェーン、デカトロン(Decathlon)は、顧客を製品開発に招き入れる専用プラットフォームDecathlon Co-creationを運営しています。公式サイトでは、共創者(Co-creators)は11万5,000人以上、プロジェクトは120以上、対象スポーツは42種目と紹介されています(2026年9月時点の掲載値)。

参加の形は大きく3つです。発売前のプロトタイプを実際に使って評価する製品テスト、競技や練習の実態を尋ねるアンケート、そして個別・グループのインタビューや創造ワークショップです。公式サイトでは、子ども用自転車やハイキング用ドレスなどが共創から生まれた例として紹介されています。なお、製品テストは現時点では主にフランス国内で実施されていると明記されています。

参考にできる点:気軽なアンケートから本格的な製品テストまで、参加の深さを段階的に用意している点です。熱量の高い人ほど開発の中心に関われる導線は、製造業や食品、日用品メーカーでも応用しやすい設計です。

【会員体験型】「所属する誇り」を生む企業事例

会員体験型は、仲間と一緒に過ごす時間や特別な体験そのものを価値にするコミュニティです。リアルな拠点やイベントを持つことが多く、会員であること自体がアイデンティティになります。

6. Rapha:有料会員制とクラブハウスで仲間とつながるRCC

ロンドン発のサイクルウェアブランドRaphaは、有料の会員組織Rapha Cycling Club(RCC)を運営しています。公式サイトによると、RCCは世界29の支部(チャプター)で構成され、各地のRaphaクラブハウスや提携カフェを拠点に活動しています。ヨーロッパ、アメリカ、アジア太平洋に拠点があり、東京と大阪にも支部があります。

会員特典には、ライドリーダーが先導する毎週のクラブライド、会員限定のRCCウェア、新商品の24時間先行購入、クラブハウスでの高性能バイクのレンタル、会員限定イベントなどが並びます。支援付きの長距離ライド「RCC FAR」や、世界の名所を巡る「RCC Summit」といった特別なプログラムもあり、専用アプリで世界中のライドを探して参加できます。

参考にできる点:商品ではなく「一緒に走る仲間がいる場所」を提供している点です。単価の高いブランドや、体験価値が重要な趣味領域の商材で特に参考になります。

7. ハーレーダビッドソン:オーナー同士をつなぐH.O.G.

アメリカの二輪車メーカー、ハーレーダビッドソンは、オーナー向けの会員組織Harley Owners Group(H.O.G.)を運営しています。公式サイトによると、H.O.G.は現在、同社のメンバーシップに統合され、オーナー体験を充実させるさまざまな特典を提供しています。

具体的には、会員誌の提供、ハーレーダビッドソン博物館への無料入館、米国・カナダでのロードサービス、走行距離を記録する「RIDE 365」などがあります。各地の支部(チャプター)やラリーと呼ばれるイベントに加え、公式アプリ上でもイベントの検索・作成やグループづくり、投稿ができるコミュニティ機能が用意されています。

参考にできる点:製品を「買ったあと」の体験を丸ごと設計している点です。購入後の不安を減らすサービスと、仲間と走る楽しみの両方を提供することで、長期的な関係を築いています。耐久消費財や高額商品を扱う企業のヒントになります。

8. adidas Runners:地域のキャプテンとコーチが支えるランニングコミュニティ

ドイツのadidasが展開するadidas Runnersは、世界各地の都市で活動するランニングコミュニティです。公式サイトでは、背景の異なる人々が、より良いランナー、アスリート、そして人間を目指して集まる国際的なコミュニティと説明されています。各地のコミュニティは、キャプテンやコーチと呼ばれるリーダーが運営の中心を担っています。

活動の軸は「ムーブメント」「栄養」「リカバリー」「マインドセット」の4つに「ギア(用具)」を加えた5つの柱です。イベントへのチェックインは公式ランニングアプリで行い、参加に応じて特典を得られる仕組みもあります。公式サイトでは、2023年に始まったプラスチック削減の取り組み「Move For The Planet」に120万人が参加したことも紹介されています。

参考にできる点:本社がすべてを運営するのではなく、地域のリーダーを育てて各地で自走できる体制をつくっている点です。店舗網や支店を持つ企業にも応用できる考え方です。

【UGC共有型】ユーザーの投稿がサービスの価値になる企業事例

UGC共有型は、ユーザーが投稿する記録や写真そのものが、ほかのユーザーにとっての価値になるコミュニティです。

9. YAMAP:登山記録の共有が「最新の山の情報」になる

福岡発のYAMAP(ヤマップ)は、電波の届かない山中でも現在地を確認できる登山地図アプリです。公式サイトでは、2024年10月の登山アプリ利用者数調査(App Ape調べ)で利用者数No.1と紹介されています。

このサービスの中心にあるのが、歩いたルートや写真をまとめた登山記録「活動日記」です。ユーザーは記録を保存・公開でき、ほかのユーザーの記録から最新のルート状況を知ったり、新しい山の楽しみ方を見つけたりできます。ユーザー同士がつながるコミュニティ機能や、コミュニティポリシーも整備されています。

参考にできる点:「安全に登りたい」という切実なニーズと、「景色や達成感を共有したい」という気持ちの両方を満たしている点です。ユーザーが記録を残すほど、ほかのユーザーの役に立つ情報が増えていく好循環が生まれています。

【BtoB学習型】顧客の成功を支える企業事例

BtoBのコミュニティは、交流の場というより、顧客が製品を使いこなし、業務で成果を出すための「学習」と「課題解決」の場として機能します。顧客の成功を支えるこの考え方は、カスタマーサクセスの考え方とも重なります。

10. SAP:膨大なQ&Aと表彰プログラムで知見を循環させる

ドイツのソフトウェア企業SAPが運営するSAP Communityは、世界中のユーザー、開発者、パートナーが集まるBtoBコミュニティです。導入企業の担当者が業務上の課題を質問し、ほかのユーザーや専門家が回答するQ&Aが中心で、製品領域ごとに掲示板が分かれています。2026年9月時点では、S/4HANAなどのERP領域だけで90万件を超える投稿が蓄積されています。

コミュニティを牽引しているのが、特に貢献度の高いメンバーを表彰する「SAP Champions」や「SAP Mentors」といったリーダープログラムです。回答などの貢献に応じて獲得できるバッジも用意されており、日々の小さな貢献が可視化される設計になっています。

参考にできる点:サポート窓口では拾いきれない現場のノウハウが蓄積され、それ自体が新規顧客にとっての安心材料にもなっています。

11. Atlassian:フォーラム・学習・イベント・表彰を一体で提供

JiraやConfluenceで知られるオーストラリアのAtlassianは、Atlassian Communityを「学び、つながり、成長する場」として運営しています。公式サイトでは、コミュニティが4つの柱で構成されています。専門家や同僚から回答を得られるフォーラム、無料のオンデマンド講座と認定資格につながる学習、各地やオンラインで開かれるコミュニティ主催のイベント、そして貢献者を認定する「Atlassian Champions」プログラムです。

参考にできる点:「困ったら聞く(フォーラム)」「体系的に学ぶ(学習)」「会って交流する(イベント)」「活躍を認められる(Champions)」という流れが一つの場所にまとまっている点です。顧客の成長段階に合わせて入口を用意する設計は、SaaS企業に限らず参考になります。

12. HubSpot:Q&Aと機能要望でユーザーの声を製品につなぐ

マーケティング・営業支援ツールを提供するHubSpotは、HubSpot Communityを運営しています。公式サイトでは、製品に関するQ&A、機能要望、ユーザー同士の知識共有のためのフォーラムと説明されており、要望への投票機能やコミュニティガイドラインも用意されています。

参考にできる点:使い方の相談と機能要望を同じ場で受け付けることで、「困りごと」と「こうしてほしい」が自然に集まる点です。投票によって要望の優先度が見えるため、開発チームにとっても意思決定の材料になります。

BtoCとBtoBで異なるコミュニティの役割

12社の事例を並べると、BtoCとBtoBでコミュニティに求められる役割が異なることが見えてきます。

BtoCの企業に共通するのは、「共感」「所属意識」「共創」です。ブランドの世界観に共鳴した人が集まり、仲間と体験を共有したり、製品づくりに参加したりすることで愛着が深まっていきます。一方、SAP、Atlassian、HubSpotのようなBtoBでは、「学習」「課題解決」「成功支援」がキーワードになります。顧客がビジネスで成果を出せるよう支えることが、結果として長期的な取引関係につながるのです。

ただし、giffgaffやSpotifyのようにBtoCでも課題解決型のコミュニティは成立しますし、BtoBでも表彰や交流による所属意識は重要です。自社の顧客が「何を求めて集まるのか」を起点に設計することが大切です。

成功企業に共通するコミュニティマーケティングの4つの秘訣

業種も国も異なる12社ですが、仕組みを分解すると共通点が浮かび上がります。ここでは、自社のコミュニティ戦略に取り入れやすい4つの秘訣として整理します。

秘訣1:「何のために集まるのか」というパーパスを明確にする

成功しているコミュニティには、メンバーが共感できる明確な旗印があります。giffgaffなら「会員が運営する通信会社」、ワークマンなら「声のする方に、進化する」、adidas Runnersなら「より良いランナー、より良い人間になる」といった具合です。製品が好きというだけでなく、その先にある価値観を共有できることが、強いコミュニティの土台になります。こうした価値観を物語として伝える方法は、ファンコミュニティを育てるストーリーブランディングでも詳しく解説しています。

秘訣2:メンバーが主役になれる「貢献の機会」と「成長の階段」を設計する

企業からの一方的な発信だけでは、メンバーはすぐに離れていきます。giffgaffの回答、デカトロンの製品テスト、ワークマンの共同開発、YAMAPの活動日記は、いずれもメンバー自身が価値を生み出す舞台です。さらにSpotify Stars、SAP Champions、Atlassian Championsのように、貢献を重ねた人が次の役割へ進める「成長の階段」があると、上級メンバーの意欲が長続きします。

秘訣3:オンラインとリアルを組み合わせる

Raphaのクラブハウス、H.O.G.のチャプターとラリー、adidas Runnersの定例ラン、AirbnbのLocal Host Clubsのように、成功企業の多くはオンラインの場とリアルな接点を組み合わせています。顔の見える関係が生まれると、オンラインでの交流も活発になり、帰属意識が一段と強まります。

秘訣4:メンバーの声を「コンテンツ」にして届け続ける

見落とされがちですが、成功企業はメンバーの声を積極的に発信しています。ワークマンはアンバサダーの動画や共同開発のストーリーを公式サイトで紹介し、デカトロンは共創者のコメントを製品紹介に添え、adidas Runnersはキャプテンやコーチの物語を発信しています。「こんな人が参加している」「こんな成果が生まれた」という発信は、既存メンバーの誇りになると同時に、新しい参加者を呼び込む入り口にもなります。メンバーの本音を引き出す聞き方については、インサイトを探る顧客インタビューの方法が参考になります。

短期的な売上ではなく長期的な指標で評価する

コミュニティマーケティングは、種をまき、水をやり、じっくり実りを待つ「農耕型」のアプローチです。すぐに売上に直結することは少なく、短期的なROI(投資対効果)だけで判断すると、成果が出る前に打ち切ってしまうことになりかねません。

成功している企業は、コミュニティを顧客との信頼関係を築くための長期投資と捉えています。見るべきは短期の売上よりも、継続率や解約率、NPS(顧客推奨度)、LTV、コミュニティ内のアクティブ率といった指標です。giffgaffのようにサポートの一部をコミュニティが担う場合は問い合わせ対応コストの変化、ワークマンのように共同開発を行う場合は開発製品の販売実績も重要な評価軸になります。顧客との関係性を数値でとらえる考え方は、顧客エンゲージメントの高め方やロイヤルカスタマー戦略の記事もあわせてご覧ください。

自社でコミュニティマーケティングを始める3つのステップ

大企業の事例を見ると、大きな予算やプラットフォームが必要だと感じるかもしれません。しかし、ワークマンのアンバサダー制度がたった一人のファンとの出会いから始まったように、最初から完成形である必要はありません。まずは次の3つのステップから始めてみてください。

  1. パーパスを言語化する:自社と顧客が共有できる価値観は何か、「このコミュニティは何のために集まるのか」を一文で表してみましょう。
  2. 熱量の高い顧客を見つける:既存顧客の中で特に熱心なファンは誰か、すでにSNSやブログで自社製品を語ってくれている人はいないかを探します。最初の中心メンバーになってくれる人の存在が、立ち上げの成否を分けます。
  3. 小さく始めて声を発信する:SNSのグループやオンライン交流会、少人数のユーザー座談会など、低コストの場からテスト的に始めます。そこで生まれた声や事例を記事や動画にまとめて発信すると、参加の輪が広がっていきます。

よくある質問(FAQ)

Q. コミュニティマーケティングを始めるには、まず何から手をつければよいですか?

A. 最初に取り組むべきは目的の設定です。LTVの向上、製品改善、サポートの効率化、ブランディングなど、何のためにコミュニティをつくるのかを明確にしましょう。そのうえで、中心となる熱量の高い顧客を見つけ、小規模な場からテストを始めるのがおすすめです。

Q. 自社にはどのタイプのコミュニティが合いますか?

A. 顧客が「何を求めて集まるか」で考えると選びやすくなります。使い方の悩みが多い商材なら助け合い型、こだわりの強いファンがいる商材なら共創型、体験や趣味性が強い商材なら会員体験型、利用記録が他の人の役に立つサービスならUGC共有型、BtoBなら学習型が基本です。複数のタイプを組み合わせている企業も少なくありません。

Q. 海外企業の事例は、日本の中小企業でも参考になりますか?

A. 規模は違っても、仕組みの考え方は十分に応用できます。たとえば、giffgaffの「詳しい顧客に回答を任せて称える」仕組みや、デカトロンの「アンケートから製品テストまで参加の深さを段階的に用意する」設計は、少人数の顧客コミュニティでも取り入れやすいものです。事例の表面ではなく、なぜその仕組みにしているのかという目的に注目してください。

Q. ファンやアンバサダーにSNS発信をお願いするときの注意点はありますか?

A. 企業が商品を提供したり投稿を依頼したりした発信は、広告に当たる場合があります。2023年10月からは、広告であることを隠す「ステルスマーケティング」が景品表示法の規制対象になっています。ワークマンが公式サイトで提供商品が含まれる場合がある旨を明記しているように、広告であることが分かる表示をお願いするなど、事前にルールを決めておきましょう。

Q. コミュニティが盛り上がらない場合、どうすればよいですか?

A. 多くの場合、メンバーが「参加する理由」や「貢献する機会」が不足しています。運営側からの告知ばかりになっていないかを見直し、メンバーが意見を出せる企画や、活躍したメンバーを紹介するコンテンツを増やしてみましょう。参加者の声を記事として届けることは、既存メンバーの誇りを高め、新たな参加を促すきっかけにもなります。

ファンとの関係を育てるコンテンツ制作をお手伝いします

コミュニティを活性化させるには、メンバーが読みたくなる記事や、参加者の声を伝えるコンテンツを継続して届けることが欠かせません。株式会社アワードは、ユーザーインタビューやメンバー紹介記事、活用事例の取材・執筆、Webコンテンツの企画・ディレクションまで、ファンとの関係づくりに役立つコンテンツ制作をお手伝いしています。「何を発信すればよいか分からない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

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